二人制審判の勉強



複数審判制におけるフォーメーションの形成とコミュニケーション(10)

甲斐 雄之 

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○ 打球の判定とフォーメーションの形成について述べます。

☆走者無しの場合。
★塁審が外野への打球を追わない場合(各塁審が担当する塁のプレーを受け持つ)。
 例1 ライトの守備位置付近へ高く上がった飛球、右翼手が落下点へ入る(ルーティンフライボール)。 一塁塁審は打球に対する野手の守備状況及びクルーの対応を見て、打球の判定責任が自分にあることを認識し、トラブルボールでないと判断したら、一塁ベース横、ファウルラインの外側(ラインから6〜8フィート)へステップして、野手のプレーに正対します。

 判定(ザッツ ア キャッチ)は打球の判定結果を示すものであります。本例のように明らかにイージーな状況であれば、単にキャッチのシグナルと穏やかなボイスの宣告で良いが、不安定な捕球、ファインプレーなど捕球か落球か際どい判断を要するプレーの判定は慎重に見極め、ジェスチャーとボイスの連呼で明確にキャッチ又はノーキャッチの判定を行います。

 二塁塁審はベースラインの内側(カットエリアの外)かベースラインの外側へステップ(チョイスであるが基本的には内側)してプレーを注視します。

 三塁塁審は三塁ベース後方(ベースから10フィート)、ファウルラインの外側(ラインから5〜6フィート)へステップしてプレーを注視します。このポジションはプレーへの待機ポジションであり、以下同じであります。

 球審はこのケースでは本塁の前へ出てオブザーブをせず、ファーストベースラインエックステンデイッドに位置してプレーを注視します。これは球審のプレーへの待機ポジションであり、プレーに備えるとは、このポジションにおいてであり、以下同じであります。 野手が打球を落球した場合は、プレーを注視してプレーの展開に合せ、担当する塁の判定に備えます。


カット


★一塁塁審が外野への打球を追う場合(トラブルボール、三人制フォーメーションに切り替えます。
 例2 ライト・ファウルライン際の打球(ライナー)、判定はフェア、打球は安打となり走者は二塁へ進塁。 球審は打球に対する野手の守備状況及びクルーの対応を見て、ファウルラインの内側を一塁カットエリアの前まで行き、走者の一塁触塁を見て、リターンプレーに備え、走者が二塁へ進塁すれば本塁へ戻り、プレーの展開を注視します。

★二塁塁審はベースラインの内側カットエリア付近又はベースラインの外側(チョイス、基本的には内側)へステップして、二塁のプレーを判定します。 三塁塁審は三塁ベースの後方、ファウルラインの外側へステップして、プレーの展開を注視します。

 二塁塁審が外野への打球を追う場合1(トラブルボール、三人制フォーメーションに切り替えます。ローテーション方式を選択)。

 例3ー1 レフト・センター間への打球(ライナー)、左翼手と中堅手が追ったが打球が抜けて走者は三塁へ進塁。 一塁塁審は打球に対する野手の守備状況及びクルーの対応を見て、一塁ベース横、ファウルラインの外側(ラインから6〜8フィート)で走者の触塁を見てプレーの展開を確認し、状況が長打のケースであり、球審が三塁へ行くのを見て、本塁へ移動して、本塁のプレーに備えます(ファーストベースラインエックステンデイッドに位置します)。

 三塁塁審はベースラインの内側を二塁カットエリア付近へ素早く移動して、二塁のプレーを担当します。 球審は本塁の前(15フィート)へ出てオブザーブし、プレーの展開を見て、長打のケースと判断したら、ファウルラインの内側を三塁カットエリア付近へ移動して、三塁のプレーを担当します。

★二塁塁審が外野への打球を追う場合2(トラブルボール、三人制フォーメーションに切り替えます。一塁塁審が二塁へスライドする)。

 例3ー2 前例3ー1を用います。 一塁塁審は前例で述べた状況判断をしたら、ピボットエリアへステップ、本例では長打であり、ピボットして走者の一塁触塁を見て、走者に先行して二塁カットエリア付近へ移動して走者の二塁触塁を見て二塁にステイします。

 安打の走者が二塁を窺い一塁へ戻るような場合は一塁カットエリア付近へ戻り、リターンプレーに備えます。三塁塁審はベースラインの内側を素早く二塁・三塁間へ移動し、二塁でプレーがあると判断したら、カットエリア付近へ詰めて判定に備えますが、本例の場合は長打であり、一塁塁審が二塁へ来るので、深く入らず三塁へ戻り、三塁のプレーを担当します。 球審は本塁の前へ出てオブザーブし、展開を見て本塁へ戻り、本塁のプレーに備えます。


カット


★三塁塁審が外野への打球を追う場合1(トラブルボール、三人制フォーメーションに切り替えます。ローテーション方式を選択)。

 例4ー1 レフト・ファウルライン際の打球(ライナー)、判定はフェア、打球は抜けて走者は三塁へ進塁。 一塁塁審は打球に対する野手の守備状況及びクルーの対応を見て、一塁ベース横、ファウルラインの外側(ラインから6〜8フィート)で走者の触塁を見て、プレーの展開を確認し、状況が長打のケースであり、球審が三塁へ移動するのを見て、ファウルラインの外側を本塁へ移動して、本塁のプレーに備えます(ファーストベースラインエクステンデイッドに位置します)。

 二塁塁審はベースラインの内側(カットエリアの外)かベースラインの外側へステップして(チョイスであるが基本的には内側)、走者の触塁及び二塁のプレーに備えます。 球審は本塁の前に出てオブザーブし、プレーの展開を見て長打のケースと判断したら、ファウルラインの内側を三塁カットエリア付近へ移動して、三塁のプレーを担当します。

★三塁塁審が打球を追う場合2(トラブルボール、三人制フォーメーションに切り替えます。二塁塁審が三塁へスライドする場合)。
★例4ー2 前例4ー1を用います。
一塁塁審は例4ー1で述べた行動において、一塁にステイして(一塁ベース横、ファールラインの外側)、一塁のプレーを担当します。本塁へは移動しません。

 二塁塁審はベースラインの内側へステップしてステイ(二塁カットエリアの外)、二塁のプレーに備え、プレーの展開を見て、長打になると判断したら三塁寄りに位置して走者の二塁触塁を見て、走者に先行して三塁カットエリア付近へ移動して、三塁のプレーを担当します。

 球審は本塁の前へ出てオブザーブし、プレーの展開を見て本塁へ戻り、本塁のプレーに備えます。

☆四人制審判のフォーメーション形成にはクルー全員がメカニックの認識を共有することが絶対用件であり、ケースに応じたメカニックの選択にはコミュニケーション(行動意思の伝達)が大切な要素であります。ボイス、シグナル及びアイコンタクトがその手段でありますので、説例を理解するうえにおいて、このプロセスを念頭に置き、クルー全員の共通認識を構築し、グランドにおいて実践することにより、メカニックを習得してください。

 説例における、ライン際の打球を追い、判定を行う場合の動作について、述べませんでしたので触れておきます。先ず、打球がフェアかファウルかの判定を行います。次に、打球が飛球であり、野手の守備行為があれば、野手がキャッチしたか否かの判定をおこないます。この2つの判定を明確に行うことは大切な仕事であります。次回へ続きます。

(2012年7月1日)



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