二人制審判の勉強



複数審判制におけるフォーメーションの形成とコミュニケーション(12)

甲斐 雄之 

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○  打球の判定とフォメーションの形成
☆ 走者一塁・二塁の場合。
★ 塁審が外野への打球を追わない場合(各塁審が担当するプレーを受け持つ)。

 例1(無死又は一死)センター・ライト間へ高く上がった飛球、中堅手が落下点へ入る(ルーティンフライボール)。

 一塁塁審は打球に対する野手の守備状況を見て、打球の判定責任が自分にあることを認識し、トラブルボールでないと判断したら、一塁ベース横、ファウルラインの外側へステップして、プレーに正体、打球に対する野手のプレーと一塁走者のタッグアップを見通して判定を行い、タッグアップした走者へのリターンプレーに備えます。打球の判定行動については「走者無しの場合」において述べたので参照してください。

 二塁塁審は打球処理に対する判定を行いません。打球に対する野手の守備状況を見て、ベースラインの内側、カットエリア付近(カットエリアの外)へステップして、打球に対する野手の守備と二塁走者のタッグアップを見通して、二塁のプレーに備えます。

 三塁塁審は打球に対する野手の守備 状況及びクルーの対応を見て、三塁ベース後方(ベースから10フィート)、ファウルラインの外側(ラインから5〜6フィート)へステップして、プレーの展開を注視して三塁のプレーを担当します。

 球審は本塁にステイ(ファーストベースラインエックステンデイッドに位置)してプレーの展開を注視(オブザーブ)します。野手が打球を落球した場合は、各塁の待機ポジションでプレーの展開を注視し、自己が担当する塁のプレーの判定に備えます。


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★ 一塁塁審が外野への打球を追う場合(トラブルボール、三人制フォメーションに切り替えます)。

 例2 (無死又は一死)ライト・センター間深くへの打球(ライナー)、右翼手と中堅手が激しく打球を追う(打球を捕球した場合と落球又は抜けた場合)。

 二塁塁審は打球に対する野手の守備状況及びクルーの対応を見て、ベースラインの内側、ワーキングエリアへステップして、打球に対する野手の守備と二塁走者のタッグアップを見通します(一塁走者のタッグアップは球審が見通します)。打球を野手が捕球すれば、二塁・一塁間ワーキングエリアで二塁及び一塁のリターンプレーとタッグアップした一塁走者の二塁でのプレーを担当します。

 野手が打球を落球した場合、打球が抜けて長打となった場合は、二塁・一塁間ワーキングエリアでプレーの展開に合わせてステップ(動作はプレーの方向へ数歩)して、プレーに対応出来るポジションを維持しながら、二塁と一塁の全てのプレーを担当します。

 三塁塁審は三塁ベース後方、ファウルラインの外側(プレーへの待機ポジション)へステップしてプレーの展開を注視、三塁のプレーに備えます。

 球審は打球に対する野手の守備状況及びクルーの対応を見て、一塁側ファウル ラインの外側へ出て、野手の打球処理と一塁走者のタッグアップを見通します。

 この後、野手が打球を落球した場合、打球が抜けて長打となった場合も含め、本塁のプレーを担当します(ファーストベースラインエックステンデイッドに位置)。


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★ 三塁塁審が外野への打球を追う場合のフォメーション形成における注意点。

 このケースにおけるフォメーションの形成は、打球が安打、抜けて長打となった場合及び野手が打球を落球した場合において、二塁塁審が二塁走者と一塁走者の二塁及び三塁のプレーを担当し、一塁塁審が打者走者の一塁及び二塁のプレーを担当するスライド方式と無死又は一死の場合で、野手が飛球を捕球した時、走者が占有する塁にタッグアップを行い、

 進塁するプレーに対応するローテーション方式(球審が三塁へ移動して三塁のプレーを担当、二塁塁審が二塁の全てのプレーと一塁のリターンプレーを担当、一塁塁審が本塁へ移動して本塁のプレーに備える)の使い分けがキーポイントになります。

 行動意思の形成において、クルーの共通認識が大切であります。以下、それぞれの事例で説明します。

★ 塁塁審が外野への打球を追う場合(トラブルボール、三人制フォメーションへ切り替えます、ローテーション方式をとります)。

 例3ー1 (無死又は一死) レフト・センター間深く飛んだ打球(ライナー)、

 左翼手と中堅手が激しく追い、中堅手が好捕する。タッグアップした二塁走者は三塁へ、一塁走者は二塁へ走塁する。

 一塁塁審は打球に対する野手の守備状況及びクルーの対応を見て、野手が飛球を捕球した時、一塁走者のタッグアップに備えますが、その方法として一塁ベース横、ファウルラインの外側(野手が捕球する確率が高いと判断した場合は通常このポジションをとります)とピポットエリアへステップする(レフトファウルライン際のフェア・ファウルの判定のみの打球、抜けて長打となる可能性がある打球及び落球の可能性がある難飛球の場合は、先に述べたスライド方式によりプレーへ対応するため、このポジションをとります)二方法のどちらかを選択します。本例は抜ける可能性がある難飛球であり、ピポットエリアへステップします。

 打球への野手のプレーと一塁走者のタッグアップを見て、球審が三塁へ移動すれば、ファウルラインの外側へ出て本塁へ移動して、ファーストベースラインエックステンデイッドに位置してプレーの展開を注視します。

 二塁塁審は打球に対する野手の守備状況を見て、ワーキングエリアへステップ、野手の打球処理と二塁走者のタッグアップを見通し、二塁のプレーを担当します。一塁走者へのリターンプレーが起これば、一塁側へステップして一塁のプレーを判定します。

 球審は打球に対する野手の守備状況及びクルーの対応を見て、二塁走者のタッグアップに備え、ファウルラインの外側を三塁へ移動、三塁前約20フィートで待機して、二塁走者が三塁へ進塁すれば、ファウルラインの内側、カットエリア付近(カットエリアの外)へステップして、プレーを判定します。


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★三塁塁審が外野への打球を追う場合(トラブルボール、三人制フォメーションへ切り替えます、スライド方式をとります)。

 例3ー2 (無死又は一死) 例3ー1で野手が飛球を落球した場合で、二塁走者は本塁、一塁走者は三塁、及び打者走者は二塁へ進塁する。 球審及び各塁審が行うプレーへの対応は、打球を野手が落球をしたり、抜けて長打となるまでは、例3ー1でのとおりであります。

 一塁塁審はピポットエリア(一塁ベース横、ファウルラインの外側に位置した時はピポットエリアへステップ)で打者走者の一塁触塁審を見て、彼が二塁へ進塁すれば、リターンプレーを頭に入れ、これに先行して二塁へ移動し、打者走者に対する一塁と二塁のプレーを担当します。

 二塁塁審はワーキングエリアへステップ(二塁と三塁の中間)して、一塁走者の二塁触塁を見て、二塁走者及び一塁走者に対する三塁及び二塁で起こるプレーに対し、ワーキングエリアでプレーの展開に合わせ、プレーの方向へ素早くステップ(二・三歩程度)して判定を行います。一塁走者が二塁から三塁へ進塁する場合は、二塁触塁を見て、二塁へのリターンプレーを頭に入れ、走者に先行して三塁カットエリア付近へ移動して、三塁のプレーを担当します。

 球審は例3ー1で述べた三塁手前待機ポジションで野手の落球を確認したら、本塁へ戻ります。本塁ではファーストベースラインエックステンデイッドの位置から二・三歩三塁方向に位置して二塁走者の三塁触を見て、本塁のプレーに備えます。

★ 三塁塁審が打球を追う場合(トラブルボール、三人制フォメーションに切り替えます、スライド方式をとります)。

 例3ー3 (二死)レフトファウルライン際の打球(ライナー)、左翼手がライン際へ激しく追うが、打球はフェア、抜けて長打となる。二塁走者は三塁から本塁、一塁走者は三塁、打者走者は二塁へ進塁する。 二死であるので、走者のタッグアップへの対応はありません。

 スライド方式をとり、球審及び各塁審の行動は例3ー2で述べた内容と同じであります。二死の場合は走者にタッグアップの必要が無く、プレーの展開が早いので、走者の動きに応じた素早いフォメーションの形成と判定行動が要求されます。

 次に、このケースで忘れてはいけないことは、タイムプレーが発生した場合への対応であります。タイムプレーの発生を予期するケースと認識したら、事前にクルー全員がシグナルコミュニケーションで確認を行い、判定に齟齬が無いように心掛けることが大切であります。このケースの判定行動において、塁審が行う「アウト」の判定宣告は、球審が行う走者の得点判定の帰結点となるので、宣告のタイミングを失する事がないよう努めることが大切であります。

 フォメーションの形成にはこのシリーズの冒頭において、ボイスコミュニケーションを始めとする行動意思の役割とその伝達方法について述べてあります。このことをフォメーションの形成行動に当てはめて実践することをお勧めします。走者一塁・二塁の場合について終わります。

(2012年8月1日)



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