二人制審判の勉強



複数審判制におけるフォーメーションの形成とコミュニケーション(13)

甲斐 雄之 

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○ 打球の判定とフォーメーションの形成
☆ 走者一塁・三塁の場合
★ 塁審が外野への打球を追わない場合(各塁審が担当する塁のプレーを受け持つ)。

例1 (無死又は一死) ライトの守備位置からセンター寄りに高く上がった飛球、右翼手が落下点へ入る(ルーティンフライボール)。 一塁塁審は打球に対する野手の守備状況を見て、打球処理の判定責任が自分にあることを認識し、トラブルボールでないと判断したら、一塁ベース横、ファウルラインの外側(10〜12フィート)へステップして、野手のプレーと一塁走者のタッグアップを見通す態勢をとり、打球に対する野手のプレーを判定します。
野手が捕球し、走者がタッグアップをすれば、これを見て、一塁のリターンプレーに備えます。

二塁塁審は野手の打球処理に対する判定は行いません。ベースラインの内側カットエリア付近(カットエリアの外)へステップして、野手のプレーを注視し、プレーの結果により起こる二塁のプレーに備えます。

三塁塁審は打球に対する野手の守備状況及びクルーの対応を見て、三塁ベース横、ファウルラインの外側(10〜12フィート)へステップして、野手のプレーと三塁走者のタッグアップを見通し、プレーの展開を注視して三塁のプレーに備えます。 球審は打球に対する野手の守備状況及びクルーの対応を見て、ファーストベースラインエックステンデイッドに位置して、プレーの展開を注視しながら、三塁走者がタッグアップをすれば本塁のプレーに備えます。

打球を野手が落球した場合は、各塁の待機ポジションで、プレーの展開とクルーの行動を注視し、自分が担当する塁のプレーに備えます。




★ 一塁塁審が外野への打球を追う場合(トラブルボール、三人制フォーメーションに切り替えます。二塁塁審は一塁と二塁のプレーを担当し、三塁塁審は三塁のプレーを担当します)。

例2 (無死又は一死) ライトファウルライン際への打球(ライナー)、右翼手が激しく追う、判定はフェア。野手が好捕した場合と落球又は打球が抜けて長打となった場合を想定した対応であります。

二塁塁審は打球に対する守備状況及びクルーの対応を見て、素早く一塁・二塁間ワーキングエリアへステップして、一塁走者のタッグアップに備えます。打球を野手が捕球すれば、一塁走者のタッグアップを見て、一塁のリターンプレーを頭に入れ、走者に先行して二塁のプレーに備えます。

野手が落球をした、また打球が抜けて長打となった場合は一塁・二塁間ワーキングエリアに位置してプレーの展開に合わせ、プレーの方向へステップして、一塁走者及び打者走者に対する一塁及び二塁の触塁及び全てのプレーを担当します。打者走者が二塁へ進塁すればカットエリア付近へ詰めてプレーに備えます。

三塁塁審は打球に対する守備状況とクルーの対応を見て、三塁ベース横、ファウルラインの外側(10〜12フィート)へステップ、野手の捕球と三塁走者のタッグアップを見通して、プレーの展開を注視します。野手が落球をした、また打球が抜けて長打となった場合は三塁にステイ、既に説明した待機ポジションに位置して、三塁の全てのプレーを担当します。

球審は打球に対する野手の守備状況及びクルーの対応を見て(一塁走者と三塁走者へのクルーのタッグアップ対応を確認する)、ファーストベースラインエ
ックステンデイッドに位置、プレーの展開を注視しながら、三塁走者がタッグアップをすれば本塁のプレーに備えます。野手が落球したり、また打球が抜けて長打となった場合はプレーの展開を注視(オブザーブ)して、本塁のプレーを担当します。




★ 三塁塁審が打球を追う場合(トラブルボール、三人制フォーメーションに切り替えます、スライド方式をとります)。

例3ー1 (無死又は一死) レフト・センター間への打球(ライナー)、左翼手と中堅手が激しく追い、中堅手が好捕し、三塁走者及び一塁走者はタッグアップをして、進塁を開始する。

一塁塁審は打球に対する野手の守備状況とクルーの対応を見て、このケースはピボットエリアではなく、一塁と二塁の中間ワーキングエリアを目標に素早く移動し、野手の捕球行為は止まって、スタンディングセットで一塁走者のタッグアップをグランスィングで素早く見ます。ピッチャースマウンド寄り、一塁・二塁間をワーキングエリアとして、プレーの展開に合わせてプレーの方向へステップ、一塁と二塁の全てのプレーを担当します。尚、野手が落球をしたり、打球が抜けて長打となった場合は、一塁走者と打者走者に対する一塁及び二塁の全てのプレーを担当します。

二塁塁審は打球に対する野手の守備状況及び三塁塁審が打球を追うのを見て、三塁カットエリア手前を目標に全力で素早く移動し、タッグアップした三塁走者へのリターンプレー(三塁への戻りのプレー)に備え。以後、三塁のプレーを担当します。尚、野手が落球した場合及び打球が抜けて長打となった場合は三塁にステイして三塁のプレーを担当します。

球審は打球に対する野手の守備状況及び三塁塁審が打球を追うのを見て、三塁側ファウルラインの外で野手の捕球と三塁走者のタッグアップを見通せる位置へステップ、スタンディングセットでタッグアップを見通して本塁へ戻り、ファーストベースラインエックステンデイッドに位置して本塁のプレーに備えます。尚、野手が落球した場合、打球が抜けて長打となった場合も同じ行動で本塁のプレーに備えます。




★ 三塁塁審が外野への打球を追う場合(トラブルボール、三人制フォーメーションに切り替えます、スライド方式をとります)。

例3ー2 (二死) レフトファウルライン際への打球(ライナー)、判定はフェア、左翼手が激しく追ったが抜けて、三塁走者は本塁、一塁走者は三塁、打者走者は二塁へ進塁。 二死であるので、走者のタッグアップに起因するプレーはありません。その代わり打球が飛べば走者は即、進塁行動を起こします。

プレーの展開に合わせた素早いフォーメーションの形成が要求されます。 一塁塁審は打球に対する野手の守備状況及びクルーの対応を見て、ピボットエリアへステップして、打者走者の一塁触塁審を見て、彼が二塁へ進塁すれば、走者のリターンプレーへの対応を頭に入れ、これに先行して二塁へ移動、打者走者に対する一塁と二塁の全てのプレーを担当します。

二塁塁審は打球に対する野手の守備状況及びクルーの対応を見て、2塁と3塁の中間へステップ、一塁走者の二塁触塁を見て、彼が三塁へ進塁すれば、2塁でのリターンプレーを頭に入れ、これに先行して三塁カットエリア付近へ移動して一塁走者に対する二塁と三塁の全てのプレーを担当します。 球審は打球に対する野手の守備状況及びプレーの展開を注視して、ファーストベースラ
インエックステンデイッドに位置して、三塁走者の本塁へのプレーに備え。事後、プレーの展開を注視(オブザーブ)します。

★ 内野と外野の中間で野手が集まる打球の場合(トラブルボール、三人制フォーメーションに切り替えます)。

例4 (無死又は一死) 二塁ベース後方へふらふらっと上がった飛球。遊撃手、二塁手及び中堅手が打球を追い集まる。

このような状況の場合は、誰が打球処理の判定を行うか、素早く明確な行動意思を伝達することが絶対要件であります。打球の位置及び打球処理に集まる野手の守備状況を見て、一塁塁審又は三塁塁審(二塁塁審は打球処理の判定をせず、走者へのプレーを担当します)は自分に打球処理の判定責任があると判断したら、躊躇せず、果敢にボイスと行動でクルーに対し、明確に行動意思を伝達してフォーメーションを形成し、プレーに対応することが大切であります。 

フォーメーションの形成及びプレーへの対応は一塁塁審が打球処理の判定を行う場合は「例2」、三塁塁審が打球処理の判定を行う場合は「例3ー1」で述べた内野とおなじ行動であります。

以上で走者一塁・三塁の場合について終わります。

(2012年8月15日)



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