二人制審判の勉強



複数審判制におけるフォーメーションの形成とコミュニケーション(14)

甲斐 雄之 

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○打球の判定とフォーメーションの形成
☆ 走者二塁の場合
★ 塁審が外野への打球を追わない場合(各塁審が担当する塁のプレーを受け持つ)。

例1 (無死又は一死) センターの守備位置近く(レフト寄り)へ高く上がった飛球、中堅手が落下点へ入る(ルーティンフライボール)。

一塁塁審は打球に対する野手の守備状況及びクルーの対応を見て、一塁ベース横、ファウルラインの外側(6〜8フィート)へステップして、野手のプレーを注視し、プレーの結果(野手の落球)により起こる一塁のプレーに備えます。二塁塁審は打球処理に対する判定は行いません。打球に対する野手の守備状況を見て、ベースラインの内側、カットエリア付近へステップ。野手の捕球と二塁走者のタッグアップを見通し、二塁のプレーに備えます。

三塁塁審は打球に対する野手の守備状況を見て、打球処理の判定責任が自分にあることを認識し、トラブルボールではないと判断したら、打球処理のプレーに正体してこれを判定し、三塁ベースの後方(ベースから10フィート)、ファウルラインの外側(ラインから5〜6フィート)へステップして、タッグアップした二塁走者へのプレーに備えます。

球審は打球に対する野手の守備状況を見て、ファーストベースラインエックステンデイッドに位置、プレーの展開を注視します(この場合は前へ出てオブザーブしません)。 野手が打球を落球した場合には、担当する各塁の待機ポジションで、プレーの展開とクルーの行動を注視し、自分が担当する塁のプレーに備えます。


 

★ 一塁塁審が外野への打球を追う場合(トラブルボール、三人制フォーメーションに切り替えます)。

例2 (無死又は一死) センター・ライト間の打球(ライナー)、中堅手と右翼手が打球を激しく追う。 二塁塁審は打球に対する野手の守備状況及び一塁塁審の対応を見て、素早く二塁と一塁の間ワーキングエリア(ベースラインとマウンドの中間)へステップ。二塁走者のタッグアップを見てカットエリア付近へステップして二塁走者へのリターンプレー(戻りのプレー)に備えます。野手が落球した場合、打球が抜けて長打となった場合は二塁と一塁の間ワーキングエリア一塁側へステップ(数歩)して、打者走者の一塁触塁を見て、彼が二塁へ進塁すれば一塁のリターンプレーへの対応を頭に入れ、走者に先行して二塁カットエリア付近へステップして二塁のプレーを担当します。

三塁塁審は打球に対する野手の守備状況及びクルーの対応を見て、三塁ベース後方(ベースから10フィート)、ファウルラインの外側(ラインから5〜6フィート)へステップしてプレーの展開を注視、タッグアップした二塁走者へのプレーに備えます。野手が落球した場合、打球が抜けて長打となった場合は三塁のプレーを担当します。 球審は打球に対する野手の守備状況を見て、本塁前(約10フィート)へ出てオブザーブ、プレーの展開に応じて本塁へ戻り、ファーストベースラインエックステンデイッドに位置して本塁のプレーに備えます。

★ 三塁塁審が外野への打球を追う場合(トラブルボール、三人制フォーメーションに切り替えます)。

このケースでのフォーメーション形成は「 スライド方式 」が基本メカニックであります。「 ローテーション方式 」は二塁走者がタッグアップをする時に選択をする場合があります。この方式の選択はクルーの共通認識と行動意思の伝達が重要なポイントになります。伝達手法についてはすでに繰り返し述べているので、この事を用いて実践してください。二死の場合は走者のタッグアップへの対応はなく。野手が落球、打球が抜けた場合はヒットエンドランを含め、走者の進塁行動が無死又は一死の場合と異なり早いので、スライド方式による走者の動きに合わせた、素早い行動が要求されます。

▲ スライド方式によるフォーメーションの形成。

例3ー1 (無死又は一死) レフト・センター間の打球(ライナー)、左翼手と中堅手が激しく打球を追う。

一塁塁審は打球に対する野手の守備状況及びクルーの対応を見て、素早くピボットエリアへステップして、プレーの展開を注視します。野手が落球した場合、打球が抜けて長打となった場合はピボットエリアでピボットして、打者走者の一塁触塁を見てリターンプレーに備え、彼が二塁へ進塁すれば一塁のリターンプレーへの対応を頭に入れ、走者に先行して二塁カットエリア付近へ移動して、打者走者に対する一塁と二塁の全てのプレーを担当します。 二塁塁審は打球に対する野手の守備状況を見ながらワーキングエリア(二塁と三塁の中間ショート前方)へステップ。野手が捕球すれば、二塁走者のタッグアップを見て、二塁のリターンプレーへの対応を頭に入れ、走者に先行して三塁カットエリア付近へ移動して、三塁のプレーを担当します。

野手が落球した場合、打球が抜けて長打となった場合は、二塁走者に先行して三塁カットエリア付近へ移動して、三塁の全てのプレーを担当します。 球審は打球に対する野手の守備状況及びクルーの対応を見ながら、本塁前(約10フィート)へ出てオブザーブ。プレーの展開に応じて本塁へ戻り、ファーストベースラインエックステンデイッドに位置して、本塁のプレーに備えます。


 

▲ ローテーション方式によりフォーメーションを形成する場合(明らかに二塁走者がタッグアップをする場合の選択)。

例3ー2 (無死又は一死) レフト・センター間へ高く上がった飛球、左翼手と中堅手が打球を追い、中堅手が落下点へ入って捕球。二塁走者はタッグアップをして三塁へ進塁を開始する。

一塁塁審は打球に対する野手の守備状況及びクルーの対応を見て、一塁ベース横、ファウルラインの外側(6〜8フィート)へステップしてプレーの展開とクルーの行動を注視。野手が捕球し、二塁走者がタッグアップをすれば、球審は三塁へ移動して三塁のプレーを担当するので、ファウルラインの外側を本塁へ移動して、ファーストベースラインエックステンデイッドに位置して、本塁のプレーに備えます。

二塁塁審はベースラインの内側、カットエリア付近へステップ。野手が捕球すれば、二塁走者のタッグアップを見通し、二塁のリターンプレーに備えます。

球審は本塁前(約10フィート)へ出てオブザーブ。打球に対する野手の守備状況及び三塁塁審の対応を見て、二塁走者がタッグアップの体勢をとれば、ファウルラインの内側を三塁方向へ少なくてもハーフウェイまでステップして待機。野手が捕球すれば三塁カットエリア付近へ素早くステップして、三塁のプレーを担当します。

▲ 二死の場合は、スライド方式でフォーメーションを形成します。
例3ー3 (二死) レフト・センター間への打球(ライナー)、左翼手と中堅手が激しく追い、左翼手がこれを落球。二塁走者は三塁を回って本塁へ進塁、打者走者は一塁を回って二塁へ向かい、左翼手から二塁手へボールが送球され、打者走者は二塁でアウトの宣告を受ける。

一塁塁審は野手が落球するか、打球が抜ければ、打者走者に対する一塁と二塁の全てのプレーを担当します。素早くピボットエリアへステップして、打球に対する野手の守備状況を見て、落球(打球が抜ける場合も含む)を確認したらピボットして、打者走者の一塁触塁を見て、リターンプに備え、彼が二塁へ進塁するので、一塁のリターンプレーへの対応を頭に入れ、彼に先行して二塁カットエリア付近へ移動して二塁のプレーを判定します。

二塁塁審は打球に対する野手の守備状況と二塁走者の走塁行動を見て、全力で三塁カットエリア付近へ移動。二塁走者の三塁触塁を見て、三塁のプレーを担当します。

球審は本塁前へ出てオブザーブ。プレーの展開に応じて本塁へ戻り、ファーストベースラインエックステンデイッドに位置して、タイムプレーの状況を確認したら、二塁走者の本塁触塁と二塁のプレーの判定を見通して、スコアか否かの宣告をします。『規則4・09(a)(注1) 第三アウトがフォースアウト意外のアウトで、そのプレー中に他の走者が本塁に達した場合、審判員はその走者にアッピールプレーが残っているか否かに関係なく、本塁到達の方が第三アウトより早かったか否かを明示しなければならない。』、この判定を要するプレーを指してタイムプレーと呼びます。

タイムプレーを想定するケースにおけるクルーの行動意思の形成、行動意思の伝達、フォーメーションの形成及び判定行動と宣告動作については、このシリーズで具体的に述べておりますので、総合して実践することが大切です。以上で走者二塁の場合について終わります。

(2012年9月1日)



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