二人制審判の勉強



複数審判制におけるフォーメーションの形成とコミュニケーション(16)

甲斐 雄之 

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○打球の判定とフォーメーションの形成
☆ 走者三塁の場合
★ 走者三塁の場合の二塁塁審のポジショニングと役割。
四人制審判における二塁塁審のポジショニングにおいて、走者三塁の場合にのみ 用いられるポジションであります。二塁塁審は遊撃手の動きを阻害しない範囲の適度の距離で平行、下がっても一歩で二塁側に位置します。遊撃手の守備行動を妨害しない配慮が必要であります。

フォーメーション形成の要となる二塁塁審の行動について述べます
(1) 外野への打球判定責任エリアである右翼手の守備位置と中堅手を含む左翼手の守備位置の間の打球(トラブルボール)を追います。
(2) 一塁塁審が外野への打球(トラブルボール)を追えば、一塁・二塁間(目標はピボットエリア)へ全力で移動して、打者走者への一塁と二塁の全てのプレーに備えます。
(3) 三塁塁審が外野への打球(トラブルボール)を追えば、三塁カットエリア付近を目標に全力で移動して、三塁のプレーに備えます。特に無死又は一死の場合でタッグアップした三塁走者のリターンプレーへの対応は重要な役割であります。以上に述べたように走者三塁のケースにおける二塁塁審の役割は行動範囲がひろく、俊敏な行動が要求されます。

★ 塁審が外野への打球を追わない場合(各塁審が担当する塁のプレーを受け持つ)。
例1 (無死又は一死) レフトの守備位置からセンター寄りに高く上がった飛球、左翼手が落下点へ入る(ルーティンフライボール)。

一塁塁審は打球に対する野手の守備状況及びクルーの対応を見て、一塁ベース横、ファウルラインの外側へステップして野手のプレーを注視し、プレーの結果(野手の落球)により起こる一塁のプレーに備えます。 二塁塁審は打球に対する野手の守備状況を見て、打球処理の判定責任が自分にあることを認識し、トラブルボールではないと判断したら、打球処理のプレーに正対してこれを判定します。

三塁塁審は打球に対する野手の守備状況及びクルーの対応を見て、三塁ベース横、ファウルラインの外側本塁寄りへステップ、三塁走者のタッグアップを見通して、三塁のリターンプレーに備えます。

球審は打球に対する野手の守備状況及びクルーの対応を見て、ファーストベースラインエックステンデイッドに位置してプレーの展開を注視し、三塁走者がタッグアップをすれば本塁のプレーに備えます。
野手が打球を落球した場合には、担当する各塁の塁審は待機ポジションでプレーの展開とクルーの行動を注視し、自分が担当する塁のプレーに備えます。


カット

★ 一塁塁審が外野への打球を追う場合(トラブルボール、三人制フォーメーションに切り替えます。二塁塁審は一塁と二塁のプレーを担当します)。
例2 (無死又は一死) 右翼手がファウルライン際へ向かって打球(ライナー)を追う。打球はフェアテリトリーへ飛ぶ。

二塁塁審は打球に対する野手の守備状況及び一塁塁審の対応を見て、ベースラインの内側(12〜13フィート)を一塁ピボットエリアを目標に全力で移動し、野手の打球処理を注視します。打球を野手が落球した場合又は打球か抜けた場合は、打者走者の一塁触塁とリターンプレーに備えます。走者が二塁へ進塁すれば一塁のリターンプレーへの対応を頭に入れ、これに先行して二塁カットエリア付近へ移動して二塁のプレーに備えます。

三塁塁審は打球に対する野手の守備状況を注視しながら、三塁ベース横、ファウルラインの外側(10〜12フィート)へステップして、三塁走者のタッグアップに備え、野手の打球処理(捕球)と走者のタッグアップを見通します。打球を野手が落球又は打球が抜けた場合は三塁ベース後方(ベースから10フィート)、ファウルラインの外側(ラインから5〜6フィート)へステップして待機、三塁のプレーに備えます。

球審は打球に対する野手の守備状況及びクルーの対応を見て、ファーストベースラインエックステンデイッドに位置してプレーの展開を注視し、三塁走者がタッグアップをした場合、打球を野手が落球又は打球が抜けた場合の本塁のプレーに備えます。

★ 二塁塁審が外野への打球を追う場合(トラブルボール、三人制フォーメーションに切り替えます。一塁塁審は一塁と二塁のプレーを担当します)。
例3 (無死又は一死) ライト・センター間へ飛ぶ打球(ライナー)、右翼手と中堅手がこれを激しく追う。

一塁塁審は打球に対する野手の守備状況及び二塁塁審の対応を見て、素早くピボットエリアへステップして、野手の打球処理を注視します。打球を野手が落球又は打球が抜けた場合は、打者走者の一塁触塁とリターンプレーに備えます。走者が二塁へ進塁すれば一塁へのリターンプレーへの対応を頭に入れ、走者に先行して二塁カットエリア付近へ移動、二塁のプレーに備えます。一塁塁審はプレーの展開を的確に読み、プレーの展開に応じて一塁と二塁の全てのプレーを担当します。

三塁塁審は打球に対する野手の守備状況を見て、三塁ベース横、ファウルラインの外側(ラインから10〜12フィート)へステップして、三塁走者のタッグアップに備え、野手の対応処理(捕球)と走者のタッグアップを見通し、リターンプレーに備えます。打球を野手が落球又は打球が抜けた場合は三塁ベース後方(ベースから10フィート)、ファウルラインの外側(ラインから5〜6)へステップして待機、三塁のプレーに備えます。


カット

球審は打球に対する野手の守備状況及びクルーの対応を見て、ファーストベースラインエックステンデイッドに位置してプレーの展開を注視し、三塁走者がタッグアップをした場合、打球を野手が落球又は打球が抜けた場合の本塁のプレーに備えます。

★ 三塁塁審が外野への打球を追う場合(トラブルボール、三人制フォーメーションに切り替えます。スライド方式、一塁塁審は一塁と二塁のプレーを担当、二塁塁審は三塁のプレーを担当します)。
例4ー1 レフトライン際へ飛ぶ打球(高く上がった飛球)、左翼手が打球を追う、打球はフェアテリトリーへ飛ぶ。

一塁塁審は打球に対する野手の守備状況及びクルーの対応を見て、素早くピボットエリアへステップして、野手の打球処理を注視します。打球を野手が落球又は打球が抜けた場合は打者走者の一塁触塁とリターンプレーに備えます。走者が二塁へ進塁すれば、一塁のリターンプレーへの対応を頭に入れ、走者に先行して二塁カットエリア付近へ移動して、二塁のプレーに備えます。一塁塁審はプレーの展開を的確に読み、プレーの展開に合わせて一塁と二塁の全てのプレーを担当します。

二塁塁審は打球に対する野手の守備状況と三塁塁審の対応を見て、三塁カットエリア付近(プレートと三塁を結ぶイマジナリーラインのカットエンド)へ全力で直行します。打球を野手が捕球し、三塁走者がタッグアップをすれば、これのリターンプレーに備えます。打球を野手が落球又は打球が抜けた場合は三塁の全てのプレーを担当します。

球審は打球に対する野手の守備状況及び三塁塁審の対応を見て、野手の打球処理(捕球)と三塁走者のタッグアップを見通すポジションへステップして、これに備えます。プレーの結果(野手の捕球とタッグアップ、打球を野手が落球又は打球が抜けた場合)を見て本塁へ戻り、ファーストベースラインエックステンデイッドに位置して、プレーの展開を注視し、本塁のプレーに備えます。

例4ー2 (二死の場合で、一塁塁審が一塁、二塁塁審が二塁と三塁のプレーを担当する事例。フォーメーションのバリエーションであり、パートナーとの意思の疎通が絶対要件であります。 レフトファウルライン際へ飛んだ打球(ライナー)、打球はインフィールドへ落ち、これを追った左翼手がワンピースバウンドで処理して、二塁へ入った遊撃手へ送球、打者走者は二塁へ進塁してクロスプレーとなる。

一塁塁審は打球に対する野手の守備状況を見て素早くピボットエリアへステップ、二塁塁審の行動意思と三塁走者の本塁への進塁を確認し、打者走者の一塁触塁とリターンプレーに備えます。

二塁塁審は打球に対する野手の守備状況を見てベースラインの内側(12〜13フィート)、二塁・三塁間へ素早くステップして、野手の打球処理と三塁走者の本塁への進塁を確認すると共に一塁塁審の行動を見て、二塁カットエリア付近へステップして、二塁のプレーを判定します。この場合、野手のエラーで、走者が三塁へ進塁する時は三塁へ行き三塁のプレーを担当します。

球審の仕事は先に述べた事例と同じであります。以上で走者三塁の場合を終わります。

(2012年10月1日)



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