二人制審判の勉強



複数審判制におけるフォーメーションの形成とコミュニケーション(最終回)

甲斐 雄之 

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○打球の判定とフォーメーションの形成
☆ 走者満塁の場合
★ 塁審が外野への打球を追わない場合(各塁審が担当する塁のプレーを受け持つ)。
例1 (無死又は一死) センターの守備位置からレフト寄りへ高く上がった飛球、中堅手が落下点へ入る(ルーティンフライボール)。

一塁塁審は打球に対する野手の守備状況及びクルーの対応をみて、一塁ベース横、ファウルラインの外側(10〜12フィート)へステップして、野手の打球処理(捕球)と一塁走者のタッグアップを見て、一塁のプレーを担当します。

二塁塁審は打球に対する野手の守備状況及びクルーの対応を見て、イマジナリーベースラインの内側カットエリア付近(カットエリアの外)へステップして、野手の打球処理(捕球)と二塁走者のタッグアップを見通してリターンブレーに備え、二塁のプレーを担当します。

三塁塁審は打球に対する野手の守備状況を見て、打球処理の判定責任が自分にあることを認識し、トラブルボールでないと判断したら、三塁ベース横、ファウルラインの外側へステップして、野手の打球処理(捕球)の判定と共に三塁走者のタッグアップを見通してリターンブレーに備え、三塁のプレーを担当します。

球審は打球に対する野手の守備状況及び三塁塁審の対応を注視して、三塁塁審が三塁走者のタッグアップを見ない場合は三塁側ファウルラインの外側へステップして、野手の打球処理(捕球)とタッグアップを見通し、ファストベースラインエックステンデイッドへ戻り、本塁のプレーに備えます。野手が打球を落球した場合には、各塁の塁審は待機ポジションでプレーの展開とクルーの行動を注視し、自分が担当する塁のプレーに備えます。




★ 一塁塁審が外野への打球を追う場合(トラブルボール、三人制フォーメーションに切り替えます。二塁塁審は一塁と二塁のプレーを担当します)。
例2 (無死又は一死) ライトファウルライン際の打球(ライナー)、打球はフェアテリトリーで、これを追った右翼手が落下点へ入る。

二塁塁審は打球に対する野手の守備状況及び一塁塁審の対応を見て、素早くイマジナリーベースラインの内側(12〜13フィート)を一塁と二塁の中間へステップして止まり、二塁走者と一塁走者のタッグアップを見ます(この場合、一塁走者のタッグアップは球審がオブザーブをすることを頭にいれて判定します)。野手の捕球後に発生するリターンブレーには、プレーの方向へステップ(数歩)して対応します。打球を野手が落球又は打球が抜けた場合は、一塁走者の二塁触塁及び打者走者の一塁触塁をその方向へステップ(数歩)して見て、プレーの展開を読み、展開に合わせてステップして、一塁と二塁の全てのプレーを担当します。この場合、一つの塁へ集中して詰めるのではなく、適度の距離で角度良くプレーを見通して判定することが大切です。

三塁塁審は打球に対する野手の守備状況を視野に入れ、三塁ベース横、ファウルラインの外側(10〜12フィート)へステップして、野手の打球処理(捕球)と三塁走者のタッグアップを見通し、リターンブレーに備えます。打球を野手が落球又は打球が抜けた場合は、三塁ベース後方(ベースから10フィート)、ファウルラインの外側(ラインから5〜6フィート)へステップして待機、三塁のプレーに備えます。

球審は打球に対する野手の守備状況及びクルーの対応を見て、一塁側ファウルラインの外側へステップして(本塁のプレーに間に合う程度)、一塁走者のタッグアップを見通し、二塁塁審のオブザーブ(補助)をします。ファーストベースラインエックステンデイッドへ戻り、三塁走者がタッグアップをした場合、打球を野手が落球又は打球が抜けた場合の本塁のプレーに備えます。




★ 三塁塁審が外野への打球を追う場合(トラブルボール、三人制フォーメーションに切り替えます。スライド方式、一塁塁審は一塁と二塁のプレーを担当、二塁塁審は三塁のプレーを担当します)
▲ 例3ー1(無死又は一死) レフトとセンターの間への打球(ライナー)、左翼手と中堅手が激しく追う。

一塁塁審は打球に対する野手の守備状況及びクルーの対応を見て、素早くイマジナリーベースラインの内側(12〜13フィート)を一塁と二塁の中間へステップして止まり、野手の打球処理(捕球)を見て、肩越しにグランスィング(チラッと)で一塁走者のタッグアップを見て(球審のオブザーブはありません)、一塁と二塁のリターンブレーに備え(二塁のリターンブレーは要注意)、プレーの方向へステップ(数歩)して判定を行います。打球を野手が落球又は打球が抜けた場合は、一塁走者の二塁触塁及び打者走者の一塁触塁をその方向へステップ(数歩)して見て、プレーの展開を読み、展開に合わせてステップして、一塁と二塁の全てのプレーを担当します。この場合、一つの塁へ集中して詰めるのではなく、適度の距離で角度良くプレーを見通して判定することは、先に述べた一塁と二塁を担当するケースと同じであります。

二塁塁審は打球に対する野手の守備状況及び三塁塁審の対応を見て、素早くイマジナリーベースラインの内側(12〜13フィート)を二塁と三塁の中間へステップして止まり、二塁走者のタッグアップを見て、三塁カットエリア付近(プレートと三塁を結ぶイマジナリーラインのカットエンド)へ全力で移動して、三塁のリターンブレーに備えます。打球を野手が落球又は打球が抜けた場合は、三塁カットエリア付近に位置して三塁の全てのプレーを担当します。

球審は打球に対する野手の守備状況及びクルーの対応を見て、三塁側ファウルラインの外側へステップして、野手の打球処理(捕球)と三塁走者のタッグアップを見通して、ファーストベースラインエックステンデイッドへ戻り、三塁走者がタッグアップをした場合、打球を野手が落球又は打球が抜けた場合の本塁のプレーに備えます。

▲ 例3ー2(一死) 例3ー1の事例を使います。打球を中堅手が功捕、タッグアップした二塁と三塁の走者は三塁と本塁へ進塁し、二塁走者は中堅手から三塁手への送球により、クロスプレーで、判定はアウトとなる。 このケースはタイムプレーであります。

本例のようにスコアリンクポジションに走者がいる場合は、アウトカウントによっても、タイムプレーがあることを予知して、認識の共有を図る(コミュニケーション)ことが大切であります。タイムプレーについての対処行動は何回も述べてきましたので、思い起こして実践してください。球審はタッグアップした三塁走者の本塁触塁と塁審が行う三塁のアウトの判定を見通して、得点か否かの判定を忘れずに行うことが大切であります。

○ 本シリーズ(16)掲載文の訂正。1、本文9行目の脱字を掲載途中で次のように補正しました。 (1) 外野への打球判定責任エリアである右翼手の守備位置と中堅手を含む左翼手の守備位置の間の打球(トラブルボール)を追います。 2、本文の、例4ー2における4行目、左翼手がワンピースバウンドで処理して、を左翼手がワンバウンドで処理して、に訂正します。

○ 本稿のテーマである『 複数審判制におけるフォーメーションの形成とコミュニケーション 』については今回で終了します。本稿で述べたさまざまなプレーへの対処行動についての論理を多様に展開するプレーの中で実践することは大変困難な仕事であります。常に問題意識を持って実践と反省を重ねる中から審判技術の向上を目指すことが大切であると痛感いたします。

長い連載になってしまいましたが、屁理屈をこね回すのではなく平易で分かり易い文章を反復して理解を求めたので長い文章になってしまいました。長い間のご愛読ありがとうございました。(終わり)

(2012年10月15日)



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