審判員の本音
審判員の本音
◇◇◇ 境野興造審判員 ◇◇◇


【15】打てる球はストライク
「サタデーリーグ」トップページへ
前ページへ


 あるリーグ戦での事です。

 暑い日でした、朝から気温はグングンと上昇していました。11:30分に試合を開始いたしました。

 このリーグの審判は初めてなので、とっても緊張をしていました。膝はガタガタ、顔には吹き出す様な汗、このままあの世に行ってしまっても少しも可笑しくない状況でした。
 (大分大袈裟です)私は先ず1投目はプレート近くならストライクを取ると決めていましたが、待てどもまてどもプレート付近には放ってくれないのです。投げるボールは、やまなりの超スロウボール、ときおり混ぜてくるストレートには力がありました。

 この超スロウボールの判定が、審判の私と投手とで噛み合って来ないのです。イニングの合間に、この投手に声をかけてみました。あの球はどうなのですか、取って貰っているの? と聞いたところ、待ってましまたと言わんばかりに、他の審判は皆取ってくれています。と答えが返ってきました。

 ハシゴを掛けなければ打てない様な球を、拾って貰っているのだ。と、内心思っていました。ところがこの後です、あんな球よく取るよな。取って貰っているのだ、と、つい思っている事が、口をついて出てしまいました。

 その投手は、あんな球とはなんだ、えーあんな球とは、と大怒りです、つい本当の事を云ってしまい、気まずい長い時間が過ぎました。あんな球でも、ストライクはストライクです。10球のうち3球ぐらいはストライクとコールしたでしょうか。


 以前にこんな議論をした事を思い出しました。20年位前でしょうか。真上からホームプレートにボールを落とします、これはストライク?かボールか? 真面目な話です。多数の審判員から規則書にあるストライクゾーンの解釈から始まり、だからボールと答えていました。が、・・・であります。

 その指導者は、「ストライク」とコールしなさいと指示されました事を思い出しました。「選手との協調だよ、理屈ではないのだ」それからプレートの上に落ちてくるのだから打てるでしょう「打てる球はストライク」

 バットを持ち打席に立つ以上は打つ事が目的でありまして、選ぶ事が目的ではないのです。ベースボールとはそういうスポーツですよ、と教えたかったのでしょう。でも納得のいかない審判員は、かなり熱く議論を続けていました。

 私がストライクを取らないために、打席に立っても振ってこない、大変なゲームにしてしまいました。延々と3時間弱の試合でした。主催者側はグランドの使用延長の手続きに走ったりして大変でした。

 これからは打てる球は"ストライク"これでいきましょう。


 (2005年8月1日)


「サタデーリーグ」トップページへ
前ページへ