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09メジャーリーグ観戦紀行(3)


In Syracuse(Minor League Baseball)

K・O審判員


7月26日(日)

 朝6時、ウェイク・アップコールで起床。
 今日はメジャーリーグ観戦ではなく、今回の目的のひとつでもあるメジャーを目指す日本人初の3Aアンパイアーの平林岳氏のアンンパイアーリングと3Aの試合を観にいく日。あらかじめ、平林さんには連絡すみ。
行く先は飛行機でおよそ1時間、ニューヨーク北西部の中核都市、Syracuse(シラキュース市)USエアー・ウェイズの4514便、11時29分発に乗る予定。

 出発2時間前にはラガーディア空港に着いた。マイレージを貯めているので「ユナイテッドのマイレージは付く?」と聞いてみたら、「Yes・・・」という答え。早速、マイレージをプラスしてもらう。
 機内で飲み物のサービスを受け、ウトウトする暇もなくシラキュースへ到着。早速タクシーを捕まえ今夜の宿泊先「Comfort Inn Suites Syracuse」へチェック・イン。驚いたことにこのホテル、クモの巣(?)のように回廊が巡り、自分の部屋へたどり着くには幾度も行き方の復習が必要。
 二階建てで、室内プールとフード・エリアを囲むように客室が配置されている構造。部屋はすご〜くきれい。トイレもピッカピカ。ベッドも大きく快眠できそう。何せ、税込み$124だから当たり前か???
 そうこうする内、今夜のナイト・ゲームの開始時間迫り、ホテルの送迎バス(小生一人の貸切状態)でAlliance Bank Stadiumへ。

写真1
大きなベッドで快眠

写真2
窓側から見たTVユニットと出入口方向

写真3
洗面台はピッカピカ

写真4
トイレもバースも爽快感あふれ

 

 スタジアムの入口でアンパーアー・クルーに遭遇。思わず「平林さ〜ン」と第一声。
すかさず、平林さん二人に「こちら、K・Oです」と小生を紹介。一通りの挨拶を終え、いざアライアンス・バンク・スタジアムへ入る。
 ここはメジャー、ワシントン・ナショナルズ傘下の「Chiefs」の本拠地。今夜の相手はシンシナティ・レッズ傘下の「Louisville Bats」
 観客の入りは今いちの5988人。ブルックリン・サイクロンズの9268人と比べてもかなり少ない。スタジアム内には飲食店やスーベニーショップも併設。値段はメジャーと比べてかなり安い。コーラとハンバーガーを食す。
マスコットの「Pops」クンは三塁側スタンドやスタジアムのコンコースで大忙し。どこでも同じだが、子供に人気がある。初めて見る3Aの試合とアンパイアーにワクワクしながら、ネット裏の前から3番目の席(最高の席)で観戦。
 この試合のアンパイアーは球審Justin Vogel、一塁Takeshi Hirabayashiそして三塁はR・J・Thompson(クルー・チーフ)の三氏。
 正当な三人制を見るのは初めて。1Aの二人制と比べかなり余裕のある動きと味のあるメカニック。わァ〜、これが本当の三人制だァ。
 試合はヒット8本を放ったシラキュースに対し、13本(一本塁打を含む)を放ったルイビルが5−3で勝ち、その実力を見せ付けた。

 試合終了後、雷鳴が轟く中クルーの車でホテルへ(同じホテルに宿泊)送ってもらい、小生の部屋で平林さんとしばらく歓談。
 その間に、日本から持参したお土産を手渡す。小生妻の手作りの梅干、小分けのインスタント生味噌汁と甘納豆それに柿ピー。
 平林さんはすこぶる元気で活躍。「こちらの水が合っているので、元気でやっていられる」と胸中を語る。その表情は明るく、希望に満ち、非常に爽やか。反面、今回会ってみて大変な苦労と努力を重ねているのを改めて解る思いが・・・。


写真5
Alliance Bank Stadiumの正門

写真6
売店のメニュー・ボード。安い

写真7
試合前の交歓(中央が平林氏)

写真8
スタジアム内の遠景

 

 ここで、アンパイアー・メカニクスについて感じたことを少々。

 球審のジャスティンはスクエアー・スタンスで構え、基本どおりのメカニックで納得のいくアンパイアーリングを見せてくれた。
 三塁にローテーションするにも素早い動きと打球から目を切らないスキルの確かさに見入る。大きな身体から繰り出す「Strike Three!」のメカニックは迫力大。
 一塁の平林さんはというと、打球を追う走力はピカ一。三回表には、ライト越えのホームランを判定。プレーを読むのが非常に早く、左中間方向の打球を三塁のR.Jがゴーズ・アウトしたときにはリミングしていたのが印象的。
 そして何より驚いたのは一塁ホース判定のポジション取り(アンパイアー・クリニックで教わった事とかなり違うぞこれは・・・)
 三遊間よりの打球に対して、一塁ベースから凡そ7〜8メートル(?)位離れ、送球に対し鋭角に、素早く一・二塁方向へ切り込み、アウト/セーフの判定。
 試合後聞いたことだが、これはメジャーと3Aのアンパイアーだけに許されたもので、野手の、一塁触塁の確認には決して良い角度ではないが、捕球と打者走者の触塁を一・二塁間の線上近くで角度を取り、プレーを横から見るのでより正確に判定出来るとのこと。

 高度な技術なので、基本メカニクスを習得できて初めて成し得るメカニクスといえる(プレーを読む力や脚力も必要)それゆえ「野球技術や審判スキルに合わせたポジション取りも一方では必要」とは平林さんの弁(メジャーや3Aでこそなし得る技術)
 三塁はクルーチーフのR.J.Thompson。今年メジャーを叶えた「Callup Umpire」のひとり。#85。その動きは自信にあふれ、見る者を納得させるには充分のメカニクス。特に、二・三塁間でのランダン・プレーの判定は見事。

 ゴーズアウトしたときの仲間とのアイコンタクトやリレーションもさすがメジャーと感じさせる。
おヤ・・・、走者一塁での位置取りが従来と違う。二・三塁の中間にいるのかと思いきや、そうではなく一・二塁間に位置。
 これも高度なテクニック?? 二塁付近でのスワイプ・タグやタグ・プレーの際「タグをしたかどうか」が見やすい位置と聞く。
 そして、このクルーは「状況に応じたさまざまなアンパイアー・メカニクスを試みている」とR.J。進化しているメカニクスに感銘。


写真9
走者一塁でR・Jは一・二塁間に位置(一塁走者、盗塁敢行)

写真10
リミングする1Bの平林氏。左肩越しから打者走者の触塁と妨害の有無を確認(このメカニクスは注目)

写真11
次のプレーを読み、始動の早い平林1BU

写真12
シラキュースのマスコット「Pops」君

 

 何気なく行われている判定やメカニクスの数々。
1A、2Aと技術を磨き経て上り詰めたAAA。希望の扉は目の前に・・・。互いに切磋琢磨しメジャーの扉を開け・・・と思いをめぐらした一日。
 試合後、クルーの三人に、トロントでのタンパベイ・レイズ戦で二塁を勤めシラキュースへとやって来たMr.Mike Estabrook、そして小生を加えた五人でホテル近郊のスポーツ・バー&レストラン「Tully's」へ・・・。
 雨降りのせいか店内は空席が目立ち、案内嬢がすぐに円卓へエスコート。オーダー前に、日本からのお土産を三人に手渡す。皆から喜んでもらえ、胸をなでおろす。三個とも同じ様な物だが、それぞれに日本語と絵柄が印字された色違いの巾着袋(マスク等入れられる)と足袋型のソックス。

 ブルーはR.Jが、赤をジャスティンがそれぞれ選び、そして黒を選んだマイクは大喜び。そして、 ビールで「カ・ン・パ・イ(日本語で)」、お通しにポップコーンの大皿が出る。そして、めいめいに食事を注文。
明るくまじめなR.J、シャイなジャスティン、陽気で楽しいマイク。三人三様。平林さんと小生はもちろんことだが皆、妻帯者。
 小生に「英語、話せる?」とR.J。「Connichiwa」と一句したためてサインをしてくれた。物静かで控えめな語り口のジャスティン。

 そして、冗談連発のマイク。店のウエイトレスと何やら怪しい会話「マイク、怒ってみて」と言ったら素直に怒る素振りをみせてくれたコールアップ・アンパイアー#83。みなの話題はもっぱらアンパイアーリングのこと。女性の話題も少々???


写真13
平林さんとR.J

写真14
クルーチーフのR.J

写真15
シャイなジャスティン

写真16
怒った素振りを見せてくれたマイク

 

 皆よく食べ、よく飲み、おおいに語り、陽気に楽しく過ごす時間の達人たち。
勘定は小生が持つつもりだったが(本当だよ)、コールアップ・アンパイアーのマイクが気遣い。Thanks for your kindness・・・。
 折からの雨も上がり、楽しい時間との別れを惜しみながら店を後にし、ジャスティンが運転する車でホテルへ帰る。
 
 ベッドに入って思った・・・。
まさか、明日のメジャー・アンパイアーたちと一緒に食事が出来るなんて・・・。ましてや、四人ものアンパイアーと・・・。この地で過ごした楽しい時間は小生にとって一生の思い出。
 このチャンスをくれた野球の神様と自分自身の幸運に感謝。おやすみなさい・・・。



(2009年9月15日)


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