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2011年「選抜高校野球甲子園観戦記」
(下)


白 球 男 児  


 3月28日・大会6日目・1回戦第1試合・・・大垣日大高校対東北高校戦
 1回表、大垣日大の攻撃で1番打者の畑選手が、第1球目をライトスタンドにホームランを打ったが、試合開始のサイレンが鳴りやまない中での1発であった。

 また、この試合の3回裏の東北高校の攻撃で、2死一塁から3番打者の小川選手が痛烈なライナー性の打球を右翼ポール際に放った。一塁塁審の判定はホームランのゼスチャー。打球はポール際のフエンス辺り(ネット部分)から、ボールを追った右翼手の方向に大きく跳ね返ってきたが、この時点で一塁走者と打者走者は二・三塁にそれぞれ達していた。

 球審もホームランのゼスチャーをしていたので、二・三塁に留まっていた2人の走者は審判員に促されて、本塁ベースを踏みベンチへ入った。

 ここで右翼手がフエンスの一部を指して、ここに当たって跳ね返ったと抗議のアピール。
 ここで審判団4人が集まって協議をした後、場内放送があった。「打球はフエンスを超えていないので、二塁打に変更して走者二・三塁で試合を再開します」と判定が変更された。

 この打球について、次の日のスポーツ新聞を見てみると、ラバーの最上部(黄色の部分)に当たってグラウンドへ跳ね返っているのが分かる。

 難しい打球判定ではあったが、最初にホームランと判定した一塁の塁審は、もう少し落ち着いて余裕をもって判断をしておれば、正しい判定が下せたのではないかと思われる。(球審・岸、塁審・西方・野口・高田)

 3月30日・大会第8日目・2回戦第1試合・・・九州学院高校対履正社高校戦
6回表九州学院の攻撃で1死満塁、8番打者大塚の当たりはレフト前へヒット性のライナー、履正社の左翼手大西が懸命に前進して地上すれすれでキャッチ。

 満塁の全走者はヒットになると思い、打球が打たれると同時に次塁に向かって一斉にスタート。

 左翼手の大西が好捕し、左翼の位置からボールを持って自身で二塁ベースまで駆け足をして触れる。二塁塁審はアウトのゼスチャー、これで3アウトであるが、実はこの二塁での第3アウトの前に三塁走者は本塁ベースを踏んでいた。(タッチアップなし)

 球審はしばらくプレイが落ち着くのを待っていたが、やがて本塁ベースから投手板方向へ4〜5メートル歩いて立ち止り、本塁ベース方向に向かって「ワン・スコア」のコール。

 ここで守備側はボールを持っていた左翼手の大西から三塁ベースにボールを送って、アピールを行った。第3アウトと第4アウトの置き換えのアピールプレイである。

 アピールされた三塁の塁審は、何のジャッジもせず・・・この間、若干の間が空き、まずい空気が流れる。どうしたの?オレ見ていないでは済まされないが、三塁の塁審と球審は困惑したような表情で顔を見合わせ、しばしにらめっこの状態が続く。

 結局球審が、4人の審判員を招集し協議・・・場内放送が行われる。

「只今のプレイについて説明をします。左翼手がダイレクトキャッチして、そのボールを持って二塁ベースを踏んだ時には三塁走者はすでに本塁に達していました。また二塁から三塁にボールを送って第3アウトと第4アウトの置き換えのアピールがありましたが、アピールが為された時には、内野手全員がファールラインを越えていたのでアピールは成立しません」との説明がありました。

 私も過去の長い審判活動の中でも一度も経験したことがない、第3アウトと第4アウトの置き換えという、珍しいアピールプレイは残念ながら日の目を見ずに成立しなかった。(球審・小谷、塁審・橘・北田・太田)

 同じく30日・2回戦第3試合・・・大垣日大高校対東海大相模高校戦
東海大相模の2回裏の攻撃で1死走者二・三塁から、4番佐藤の当たりは三塁の右(遊撃手寄り)への強い打球となった。三塁手は打球の速さに捕れずボールは三塁手の脇を抜けて後ろへ転じ去った。この打球に二塁から三塁に向かって走っていた臼田の足に当たって、ボールは三塁後方の塀の方向へ大きく転がって行った。

 一瞬打球に当たった臼田も打者走者の佐藤もボールデッドと思ったか、走しるのやめて立ち止ってしまったが、審判員が何もコールしないのを見た三塁コーチャーが、手をぐるぐる回して「走れ、走れ」のゼスチャー、一度立ち止まった走者は、我に返って走塁を開始し二者が生還した。

 大垣日大から抗議があり、ここでも場内放送が行われた。

「三塁手の脇を抜けて行った打球に対して、他の野手に守備機会がなかったので、インプレイとして試合を再開します」(球審・野口、塁審・古川・岸・元雄)

 今回の選抜大会の観戦では、第1日目の第1試合の第1球目をいきなりのホームランを含めて、草野球でも滅多にお目にかかれない際どいプレイの数々に遭遇、そして場内放送を3度も聞くことができた。

 今回の甲子園への旅は、審判員を志す者にとって、ルール適用面での煩雑なプレイが多く、十分過ぎるくらいの成果があり、収穫の多い旅となった。

 今年の選抜大会は、4月3日に決勝戦が行われ、東海大相模高校が福岡県の九州国際大付属高校を6—1で破って、72回大会(2000年)以来2回目の優勝を飾って12日間の幕を閉じた。

(2011年4月10日・記)



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ホームランの判定を2塁打に変更した時の協議の模様です。ライトのフエンス(網)が写っているのは、協議の対象となった打球の方向を示すものです。

(2011年5月1日)



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