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本塁での激突プレーに思うこと
(上)


#47 Umpire  


 それは5月26日(日本時間で5月27日)、SFジャイアンツの本拠地AT&T Parkで行われた、SFジャイアンツ対FLAマーリンズ戦の延長12回表に起こった。
 FLA三塁走者のスコット・カズンズ選手とSF捕手バスター・ポージ選手が本塁で激突したのだ。

 一死、走者一・三塁、打者の右翼飛球でFLAの三塁走者、スコット・カズンズがタグアップ。右翼手からの本塁返球はワンバウンドで、やや右に反れた。SFのバスター・ポージ捕手は本塁前で構え返球を捕り損ねたが、走者へタグに行った。この時、走者のカズンズ選手とポージ捕手との問題の激突が起きた。結局これが決勝点となり7-6でジャイアンツが敗れた試合だった。

野次さん:「映像でみると本塁走路は空いているじゃネェか。普通にスライディングしたってセーフなのに、カズンズは右肩を落とし斜めにポージに体当たりを喰らわしてやがるヨ。これって悪質だってぇの。守備妨害じゃネェのか・・・?」

喜多さん:「ウ〜ん、確かに走路は空いているみたいだよなァ。でもヨ、ポージだって球を持ってないのにカズンズへタグに行っているヨ。逆に走塁妨害じゃネェ・・・?」

野次さん:「まァ、どっちもどっちもだから喧嘩両成敗で痛み分けといったところかな??」

 では、プレーを映像でもう一度検証してみる事にしよう。
右翼手からの返球がワンバウンドでわずかに右へ反れ、
A本塁前で捕手はボールを捕り損ねた後、
B走者へタグに行っている(その時、本塁走路は空いていたように見える)
Cタグアップした三塁走者は本塁手前で、右肩を下げるようにして捕手に激突。E捕手は身体を投げ出され、走者は本塁未触。
F球審は冷静にプレーを注視し、走者の本塁触塁を確認し「Safe」のメカニック。

 この様な状況で、果たして走者は捕手に激突する必要があったのか・・・?
 また、本塁返球を捕り損ねた捕手は走者へタグ(空タグ)をしに行く必要があったのか・・・?

 それは「必要が在った」か「無かった」かには関係なく、この間のプレーが瞬時に(コンマ何秒で)走者と捕手双方で判断され、行われた結果なのだ。
 走者は懸命に得点しようとするし、捕手はそれを許さじと必死にプレーする。それが衝突プレーになる。

 いみじくもFLAエドウイン・ロドリゲス監督(成績不振の責任を取り6月20日辞任)が試合後「本塁でのクロスプレーは非常に危険なものです。捕手は本塁を死守しようとするし、一方の走者は得点しようとする。それが両者の仕事なんですから・・・」と語り、今回のプレーを容認した。

 まさに、そのとおりで、それ以外に何もありません。事実、大半の選手が「カズンズ選手の走塁は未熟だが、普通のプレーだ」と話している事でも頷ける。

 日本の高校野球ならいざ知らず、プロならば走者は身体を以って得点しようとするだろうし、一方捕手は身体を張って本塁を死守しようするだろう。
 それが普通ではないだろうか・・・?

 しかし、ぶつかってしまった走者にとっては非常に「あと味が悪い」ものにちがいない。当該走者は一様に「プレーは正当であっても、ケガをさせたのはすまないこと」と詫びているようだ。
そして「同じようなことがまた起きれば、同じようにプレーする」とも語っている。

 一部には「捕手の安全を確保するためにルールを変えるべきだ」との意見が出ている。では、規則を変えればこの様なプレーは無くなるかと云えば、そんなことは決してない。
また、どう規則を変えれば良いのか、具体案が見えてこないことも事実である。

 SFジャイアンツのボウチ監督は「無防備な捕手へ激突した走者には罰則を設けるべきだ」と言っているようだが、本塁でのクロスプレーの醍醐味を知っているファンの同意を得られるか甚だ疑問である。
 ファンは本塁でのクロスプレーの結果に一喜一憂しフランチャイズチームを応援しているのだから・・・。

(つづく)

(参考資料)
ポージーが負傷したプレーの映像(英語)


(2011年7月1日)


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