野球の夢と現実

首都圏サタデーリーグ会長 臼井 淳一




 いろいろなスポーツの中で野球ほどドラマチックなスポーツはありません。それは集団スポーツの中で、攻撃と守備がはっきり分かれてているのは野球しかありません。攻撃の時にはホームラン、タイムリーヒット。守備に回れば投手の力投、野手のファインプレー。これだけを取っても、その過程には多くのドラマとロマンがあります。

 われわれ草野球を愛する者は、子供のころ、あるいは学生時代に一度はプロ野球選手になりたい『夢』を追い続けたと思います。この『夢』をほんの少し思い出してくれるのが、これまた草野球の大きな魅力です。

 実力がなかったから『プロ野球選手』になれなかったのか、いや、違うと思います。身長があと一センチ、あのとき肩を壊なかったら、足がもう少し速かったら、あの時ホームランを打っていたら、あの試合を勝っていたら、途中で野球を止めなかったら、みんなプロ野球選手になっていたと思います。

 プロとアマの差は、あってないようなのが野球です。あえて言うなら「スピード」です。実はここが大きな違いなのです。お金を払ってプロ野球を見に行き、だらだらとしたプレーを見せられると、思わず「金を返せ」と言いたくなることがあります。勝ち負けも大事かも知れませんが、プロ野球は「スピード」があるプレーを見せなくては、われわれ『夢』やぶれた者にとっては「裏切り」ではないでしょうか。

 さて、現実に戻ると月1〜2回の我々の試合もいろいろな困難が伴います。まず、グラウンド確保。これが最大の問題。特に交通の便がよく、囲いのあるグラウンドは数えるほどしかありません。土曜日、日曜日、祭日はこのようなグラウンドを取ろうと思ったら、はがき抽選のところは、はがきは多く出さなくてはなりませんし、抽選でも人を多く出さなくては取れません。

 さて、グラウンドは確保したとして、人集めです。最近の不況、リストラで野球どころではない、いつもは15人ぐらい集まったのに、9人がやっととか、それも当日キャンセルとかで、監督兼・世話役は試合当日まで気が休まりません。

 そんな苦労をしても野球がやりたいのです。勝っても負けても、スポーツ新聞4面分ぐらいの記事が書けるほど話題に事欠かないのです。だから、だから毎週、野球をやりたいのです。が、現実は厳しい。特にクラブチームは3年で解散すると言われています。また、企業チームも数年前までは「援助金」が出ていたのが、打ち切りになり、エースで四番がリストラでチームが解散。それでも残った者がクラブチームを作り運営しています。

 「映画って楽しいですねー」と言った人がいますが、「野球やっている時、生きているって感じる」そんな魅力が野球に隠されています。

 首都圏サタデーリーグも結成5年目を迎えますが、野球の夢を追う者にとって本当に充実したリーグにして行きたいと思っております。そのためにも「野球ばか」にならないで、世の中の動き、世界の動向にも目を向け、長く続けられるリーグにしていこうではありませんか。

[1999年8月]