スポーツ博覧会
スポーツ・ライター 玉木正之


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 ■1 スポーツの品格

 酒に酔って暴れた横綱が強制的に引退……。
 バンクーバー冬季五輪日本代表選手のユニフォームの着方がだらしなくて非難が集中……。
 最近「スポーツマンと品格」という問題が改めて注目された。

 大相撲はスポーツ(格闘技)と同時に日本古来の神事であり、四股で大地を踏み、五穀豊穣を祈る力士の頂点に立つ横綱に「品格」が求められるのは当然。朝青龍の行動は容認できるものではなかった。
 酔漢としての事件だけでなく、拳を握りしめたガッツポーズや勝負が決まったあとの駄目押し、腰の据わらない土俵入りや珍妙な動きの手刀など、大相撲の様式美や儀式を無視したものとして非難されるべきものだった。
 が、相撲ファンやテレビのコメンテイターのなかに「ガッツポーズくらい悪くない」「型破りな横綱がいてもいい」といった朝青龍擁護の意見があったことには驚いた。

 相撲は素手で闘うのが基本。土俵入りや手刀は手の中に武器を隠し持ってないことを表している。
 その「型」を崩すと「型破り」でなく「型無し」になり、相撲という日本文化の根幹を揺るがす行為となる。

 西洋生まれのスポーツには、相撲ほどの「伝統」や「型」は存在しないが、冬季五輪に出場したスノーボード選手のファッションには、隠された「意味」があった。
 シャツをズボンの上に出し、ズボンをずり下げて履くルーズな腰パン・ファッションは、元々ベルトの使用を許可されない囚人服のスタイル。
 そこには当然、社会からドロップアウトしたり、反体制的な生き様の主張が含まれている。
 それは日本選手団の一員としては明らかに不適切。
 そういう「型」や「意味」を知っていてこそ、本当に「型破り」な横綱やスポーツマンが出現するはずだ。


(「損保のなかま」2010年4月1日付より)


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