スポーツ博覧会
スポーツ・ライター 玉木正之


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 ■8 「スポーツの秋」は日本の常識 世界の常識は「スポーツは夏」

 夏の猛暑もようやく幕を閉じ、「スポーツの秋」が訪れた。といいたいところだが、世界の常識では、スポーツの季節は「夏」なのだ。
 オリンピックが行われるのは8月。スキーやスケートの「冬のオリンピック」に対して「夏のオリンピック」とは呼ばれても、「秋のオリンピック」とは呼ばれない。
 それは19世紀に近代スポーツを生み出したイギリス中心の考え方で、各種スポーツ競技のことを、イギリスでは「サマー・ゲーム(夏の競技)」と呼んでいるのだ。
 首都ロンドンは北緯51度。北海道の稚内(北緯45度)より、さらに北に位置し、暖流の関係で温帯に属するとはいえ、冬は寒く、夏穏やかでスポーツに最適の季節となる。
 しかも、かつて七つの海を支配した大英帝国は世界文明の中心。どの国も「文明の中心」と同じ文明国であることを示すため、スポーツはイギリスと同じ夏(8月)に行うことにした。
 が、極東の島国の首都東京で、1964年に初めてオリンピックを開催したときは、その国独自の「常識」に従い、「スポーツの秋」の10月10日を開会式と決定した。国際オリンピック委員会(IOC)がそれを認めたのは、東京(北緯35度)は「熱帯」にあると判断したからだという。
 判断の正否はさておき、東京五輪がスポーツに最も適した季節に開催されたのは喜ぶべきこと。
 最近のバルセロナ、アトランタ、アテネ、北京など、夏の猛暑のなかでオリンピックが開かれたことのほうが問題といえる。
 しかも、それは近代スポーツ発祥の国イギリスの影響ではなく、猛暑の夏に視聴率が落ちる、世界のテレビ各局の要望によるものだという。
 なるほど。だから五輪選手のギャラは高額になる…?


(「損保のなかま」2010年11月1日付より)


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