スポーツ博覧会
スポーツ・ライター 玉木正之


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 ■17 「スポーツの憲法」成立で日本のスポーツは?

 6月17日、超党派の議員立法「スポーツ基本法」が、参議院を通過、成立した。

 この法律は、言わば日本のスポーツの憲法。1961年に作られた「スポーツ振興法」は、プロスポーツを除外するなど、現代の状況に適さなくなっていた。
 その旧振興法を半世紀ぶりに全面改正。プロスポーツも障害者スポーツも明記され、さらに前文で「スポーツは世界共通の人類の文化」「スポーツを通じて幸福で豊かな生活を営むことは全ての人々の権利」と、スポーツを楽しむ権利(スポーツ権)が人類固有の権利と確認された。

 このようなスポーツの憲法の成立は心から歓迎したい。
 が、法律全体は、残念ながら少々中途半端で分かりにくい。プロスポーツに関する記述も、国際大会で「優秀な成績を収めることができるよう(支援する)」と書かれているのみ。「地域スポーツクラブ」への「支援」も、Jリーグやプロ野球のチームを含むか否か判然としない。
 また「スポーツ庁」の設置に「必要な措置を講ずる」と記されているものの、「行政改革の基本方針との整合性に配慮し…」と遠慮気味。
 さらに、たとえば高校野球等の学校スポーツはスポーツ庁管轄下の「スポーツ基本法」に基づく「スポーツ」なのか、それとも文部科学省管轄下の「教育基本法」に基づく「教育(体育)」なのか、といった点も明確ではない。
 前文には「国家戦略」として「スポーツ立国の実現を目指す」とも書かれているが、「スポーツ立国」とは?…等々、判然としない点は数多い。
 この条文から曖昧さを排除すべく修正し、スポーツの発展が日本社会の幸福の増進につながるよう努力することが必要だろう。

 せっかくのスポーツの憲法を美しい文章だけで終わらせないために。

(スポーツライター・音楽評論家。国士舘大学体育学部大学院非常勤講師。著書多数)


(「損保のなかま」2011年8月1日付より)


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