スポーツ博覧会
スポーツ・ライター 玉木正之


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 ■23 東京五輪に「被災地」から強い味方

 2016年のオリンピック招致でリオデジャネイロに敗れた東京が、さらに2020年のオリンピック招致にも立候補を決めたことは、多くの人が知っているだろう。
 とはいえ、招致に大賛成…という人は、多くないようだ。
 16年の招致合戦でも、リオの市民は9割前後の人々が招致に賛成したのに、東京都民の賛成者はせいぜい6割。連続しての立候補に、東京都は「震災からの復興五輪」のキャッチフレーズを掲げたが、「原発事故の後処理のなかで実際に開催できるのか?」「復興五輪なら東北地方でやるべき」……といった声も聞く。

 が、あまり報道はされてないが、被災地から東京五輪招致に協力しよう……という声があがった。
 昨年(2011年)11月27日、まだまだ津波の傷跡も生々しい石巻市で、柔道、剣道、空手、テコンドーの世界選手権や五輪メダリストを招き、武道フェスティバルが開催された。と同時に、今後石巻市は「武道の町・石巻」として、青少年の武道の普及に力を入れることを宣言した。

 千年に一度といわれる大災害に暴動も起きず、整然と助け合って対処した事実は、武道の精神にも通じ、その武道の普及で子供たちの元気な声があふれる町を取り戻そうというのが主たる狙いだ。
 実際、子供たちを中心に人口流出が続いているので、何とか歯止めをかけたいところだろう。その一環として、東京五輪招致に協力し、20年五輪招致を成功させ、正式種目である柔道やテコンドーの石巻開催が難しければ、正式競技ではない空手や剣道などをエキシビションとして石巻で開催し、復興の目標、復興のエネルギーに……という。

 この被災地からの声には、東京都民もシラケた反応を繰り返せないだろう。

(スポーツライター・音楽評論家。国士舘大学体育学部大学院非常勤講師。著書多数)


(「損保のなかま」2012年2月1日付より)


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