スポーツ博覧会
スポーツ・ライター 玉木正之


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 ■28 五輪はスポーツと芸術の祭典

 「オリンピック芸術祭」というものが存在することを、皆さんはご存じだろうか?

 古代ギリシアのオリンポスの祭典では、ゼウスを主神とするオリンポスの神々のような強靱(きょうじん)で美しい身体に近づこうとして走力や体力を競うと同時に、神々の威光をたたえて竪琴を弾いたり、詩歌を吟じることも競った。また、運動の様子(神々に近づく様子)を彫刻や絵画に表現した。

 近代オリンピックを創始したクーベルタン男爵も、身体競技だけでなく、精神活動も正式競技として加えることを決意。1912年の第5回ストックホルム大会から、彫刻、絵画、文学、音楽などの種目で参加作品を募り、優秀作には金・銀・銅のメダルを授与する「芸術競技」を始めた。
 しかし芸術は順位を争うものではない、との考えから1948年ロンドン大会を最後に芸術競技は廃止。次のヘルシンキ大会からは、オリンピック開催都市(冬季大会も含む)で「芸術展示」を行うことをIOC憲章で義務づけた。
 だから1964年の東京大会では歌舞伎や能、コンサート、絵画展、書道展が数多く開催され、1998年の長野冬季五輪でもあまり知られてないが、『創作オペラ善光寺』の上演をはじめ、多くの芸術イベントが催された。
 最近で印象深かったオリンピック芸術祭は、2000年のシドニー五輪。オペラハウスでは連日オペラが上演され、ロック・ポップスのコンサートも数多く行われたほか、アニメ・フェスティバルと称して日本の『もののけ姫』『鉄腕アトム』なども上映された。

 今回のロンドンでも芸術祭は盛大に……
 しかし日本でほとんど報道されないのは、メディアもオリンピック芸術祭の存在を知らないから……?

(スポーツライター・音楽評論家。国士舘大学体育学部大学院非常勤講師。著書多数)


(「損保のなかま」2012年7月1日付より)


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