スポーツ博覧会
スポーツ・ライター 玉木正之


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 ■35 国民体育大会の開催意義

 今年の国民体育大会(国体)は、どこで開かれるのか? ご存じだろうか。
 答えは東京。主に多摩地区と島しょ部で開催される(伊豆七島や小笠原諸島も東京都ですからね)。

 第二次大戦の敗戦からの復興運動として各県持ち回りで開催された国体も、今年で68回目。「まだやってたの?」と言う人もいるかもしれないが、今年の東京大会は「スポーツ祭東京2013」と名付けられ、国体史上初めて第13回全国障害者スポーツ大会と同時に開催されることになった。
 これは画期的な出来事というほかない。1988年京都大会で、国体が2巡目に入ったとき、戦後復興という使命も終わった国体を開催し続ける意義があるのか、という声が高まった。
 が、新たな意義を見いだせないまま、半ば惰性で続けられていた国体に、ようやく新しい意義が見つかったのだ。
 ナチュラルに考えれば、スポーツの健常者大会と障害者大会を、別々に開催する理由など、どこにもない。両者がこれまで分かれていたのは、障害者スポーツが、スポーツという以上にリハビリテーションとして障害者の治療の一環と考えられていたからだ。

 今でも我が国では(まったく情けないことに)障害者スポーツは厚生労働省、健常者のスポーツは文部科学省と、時代錯誤としか言い様のない考え方を続けている。そのためオリンピックとパラリンピックも別種類のものとして、東京・銀座でのオリンピック・メダリストのパレードがパラリンピックの終了を待たずに行われたりもした。これは明らかに障害者差別である。 が、今年の国体で、東京都がようやく差別解消に乗り出した。ならば2020年の招致を目指している東京オリンピックも、パラリンピックとの同時開催を唱えてほしいものだ。

(スポーツライター・音楽評論家。国士舘大学体育学部大学院非常勤講師。著書多数)


(「損保のなかま」2013年2月1日付より)


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