スポーツ博覧会
スポーツ・ライター 玉木正之


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 ■37 スポーツマンは英語が必須!

 先日行われたフィギュア・スケートの世界選手権シングルは、男子はパトリック・チャン、女子はキム・ヨナの優勝で幕を閉じた。浅田真央はショートで6位と出遅れたものの、フリーで巻き返して3位。来年のソチ冬季五輪へと期待をつなげた。

 が、そんなこと以上に私が注目したのはキム・ヨナのインタビュー。彼女は、すべて流ちょうな英語で答えていた。ともすれば少々生意気な態度を見せるキム・ヨナに批判的な声も多い(正直言って小生も好きではない)が、バンクーバー冬季五輪の前にカナダで生活して身に付けたという彼女の英語は見事だった。
 世界女王で五輪女王の彼女が、これほどインターナショナルな言語を使いこなせば、彼女は将来、世界スケート連盟の幹部になることも十分に考えられる。
 そうなると、当然韓国スケート界にとって何かと好都合な事態もあるだろう。そのとき日本のスケート界(と日本のスポーツ・ジャーナリズム)は、「また日本に不利なルール変更が…」と言って嘆くのだろうか?

 そんなことを考えたのは、同じ時期に日本の柔道界に不祥事が相次いだからでもあった。女性五輪代表候補選手に対するパワハラやセクハラ、さらにコーチに与えられた選手強化費の不正流用疑惑…。
 しかも日本は柔道発祥の国にもかかわらず、英語を流ちょうに話せる人がほとんど存在せず、国際柔道連盟に意見を主張できる(投票権のある)理事が一人も選ばれていない。
 同じ時期、WBCも開かれ、日本はベスト4で3連覇を逃したが、WBCのルール作りや組織作りを、堂々と英語で討論し、意見を主張できる野球人がいるかどうか……。
 これからのスポーツマンは英語の能力を必ず身に付けるべきだろう。

(スポーツライター・音楽評論家。国士舘大学体育学部大学院非常勤講師。著書多数)


(「損保のなかま」2013年5月1日付より)


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