スポーツ博覧会
スポーツ・ライター 玉木正之


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 ■38 日本プロ野球の行く末

 長嶋茂雄氏と松井秀喜氏が国民栄誉賞を受賞……。
 その政治的思惑やマスコミの胸算用はさておき、天覧試合サヨナラホームランに始まり、メジャーリーグで大活躍する選手を育てた長嶋茂雄という希代のスーパースターに思いをはせ、「彼が去った後の日本野球はどうなるのか」とボンヤリ考えていたら、面白い本に出合った。

 『ビジネスで大事なことはマンチェスター・ユナイテッドが教えてくれる』(広瀬一郎+山本真司・著/近代セールス社・刊)というサッカーの本だが、「サッカー」という言葉を「スポーツ」に換えて文章を紹介すると…
 《スポーツビジネスとは「スポーツを健全に発展させること」であり、そのために必要なコストは稼がなければならない》《日本のプロスポーツ関係者の相談を受けるとがっかりすることが多いんです。ビジネス戦略がどういうものかというイメージも持ってない(略)。それで、お金集めの議論ばかりする。結局はスポンサー探し、つまりタニマチ探しに議論が落ち着く》
 なるほど。日本のプロ野球界も、タニマチである「親会社」からの支援に頼ってばかりで、アメリカ・メジャーリーグ(MLB)のように野球をビジネスとして「健全に発展」させようとする「戦略」を持っていない。

 長嶋氏が巨人入りした1958年から国民栄誉賞を受賞した今年まで、日本のプロ野球のセ・パ2リーグ12球団体制は変わらない。
 が、MLBは16球団が30球団に増え、WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)などで世界中の野球選手の力量を見極め、最高の選手をスカウトするシステムまで作りあげた。
 ならばいずれNPB(日本プロ野球)もMLBに吸収合併されてしまうのか……?

(スポーツライター・音楽評論家。国士舘大学体育学部大学院非常勤講師。著書多数)


(「損保のなかま」2013年6月1日付より)


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