スポーツ博覧会
スポーツ・ライター 玉木正之


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 ■59 東京五輪の目的とは?

 年が明けて2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催まで、あと5年となった。
 しかし、残念ながら世の中の盛り上がりはイマイチのようだ。

 水泳や卓球、バドミントン、柔道など、若い日本の選手は着実に大勢育っているようで、スポーツ庁も誕生しそうだ。
 が、新国立競技場などの施設は本当にキチンと整えられるのか? 五輪後の利用計画は確かなのか? いや、それ以前に一体どんな五輪大会を、何のために開催するのか? それがサッパリ見えてこない。

 そもそも、東京五輪の目的や価値をはっきり言える人はどのくらい存在するのだろうか? もちろん政治家やスポーツ関係者の中に、それをキチンと答えられる人は何人かいる。
 彼らが口をそろえて言ったのは、「東京五輪の招致や開催は目的ではない」ということだ。

 現代社会でスポーツという人類共通の文化は、政治的にも経済的にも社会的にも大きな役割を担うようになった。豊かな社会を築く上でスポーツの発展と人々の生活の中へのスポーツの浸透は、欠かせない要素となった。
 が、日本のスポーツ政策は不十分で、まずはスポーツ文化政策を推し進める省庁(スポーツ庁)を設立し、多くの人々の健康と幸福につながるスポーツ政策を推進しなければならない。
 そんな「スポーツ立国」を実行するには、東京五輪の招致開催が有効である。つまり東京五輪は開催することが目的ではなく、スポーツ立国実現のための手段なのだ。
 マスメディアは、その点を理解して2020年五輪を語るべきではないか。

 決してメダル数や経済効果を取り上げるだけのお祭り騒ぎで終わらないよう願いたいものだ。

(スポーツライター・音楽評論家。国士舘大学体育学部大学院非常勤講師。著書多数)


(「損保のなかま」2015年3月1日付より)


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