スポーツ博覧会
スポーツ・ライター 玉木正之


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 ■62 何故か「死」に関する作品が増えて

 『スポーツ・アンソロジー彼らの奇蹟』は、何故か「死」に関係する作品が増えてしまった。

 4月25日に小生が編纂した『彼らの奇蹟――傑作スポーツアンソロジー』(新潮文庫)が出版された。この「選集」は新潮文庫百周年記念として作ったもので、格闘技と野球を除き(それらは別の文庫になるとか)、小説以外のジャンルで……という出版社の条件に従って編集させていただいた。
 その結果、ノンフィクション評論が集まるのは当然とはいえ、それだけでは面白くないので、小生はまず吉田兼好の『徒然草』から「五月五日賀茂の競べ馬」を選び(競馬はスポーツですからね)、続いて澁澤龍彦の平安時代の蹴鞠に関する文章、ドイツ人哲学者ヘリゲルの日本の弓術(武道)に関する文章を選んだ。

 さらに小林秀雄と三島由紀夫のスポーツ論、大江健三郎、杉本苑子、有吉佐和子の64年東京五輪観戦記、虫明亜呂無の女性スポーツ論、開高健の釣りのエッセイ、村上春樹のランニング論……等々、常日頃スポーツ雑誌に親しんでいる読者が、あまり目にすることがない(と思われる)スポーツに関する素晴らしい文章を集めた。もちろんスポーツノンフィクションの大御所である佐瀬稔の登山論、沢木耕太郎のマラソン論、山際淳司のボートに挑んだ男のノンフィクション、後藤健生のサッカー論も含め、比較的若い作家である宇都宮徹壱の欧州サッカー論、中村計の現代ゴルファー論等も選んだ。そして僭越ながら、編者(小生)のラグビー論も加えておいた。

 その結果、合計19人の作家による作品を集めたのだが、驚いたことに、そのうち過半数の11が、意図しないまま「死」と関係ある作品になってしまった。「生」を謳歌するはずのスポーツも、窮極に至ると、「死」に触れるのか?
 私自身、これは新しい発見だった。少々我田引水になったが、是非とも御一読下さい。

(スポーツライター・音楽評論家。国士舘大学体育学部大学院非常勤講師。著書多数)


(「損保のなかま」2015年6月1日付より)


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