スポーツ博覧会
スポーツ・ライター 玉木正之


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 ■73 東京五輪は失敗する?

 先日、あるテレビ番組(タレントの司会で討論をする番組)に出演したが、その録画撮りの前に少々不愉快なことがあった。というのは、プロ野球界の野球賭博や、2020年の東京五輪を話し合う内容について、担当ディレクターが次のような「注意」を口にしたからだった。
 「巨人からちょっと抗議を受けてますので、渡邉恒雄氏に対する批判的な言葉は避けてください。それと(オリンピック・パラリンピック)組織委員会の森喜朗会長に対する批判もご遠慮願います……」
 私は苦笑いするほかなかった。
 そもそも私は、日本のマスメディアで、スポーツに関する自由な発言ができるなどと思ったことがない。読売系の新聞やテレビで巨人批判やプロ野球批判、箱根駅伝の批判は御法度。朝日系のメディアでは高校野球に関する批判はダメ。毎日系や日経系のメディアが、辛うじて話しやすく書きやすい状況にある。
 とはいえ、読売、朝日、毎日、日経のメジャー4紙がすべてオリパラ組織委と「オフィシャルパートナー」という大口スポンサー契約を結んだ。
 02年のW杯サッカー日韓大会で、朝日新聞が「オフィシャル・ニュースペーパー」なる契約を結んだときも、それは「サッカー・ジャーナリズムの自殺」だと仰天した。が、今度は4大新聞が自ら進んで「オフィシャル(公認)機関紙」となった(スポーツ・ジャーナリズムを放棄した)わけだ。
 米国第3代大統領のジェファーソンは、「私は政府が存在して新聞が存在しない社会よりも、政府が存在しなくて新聞の存在する社会を選ぶ」という言葉を残した。
 それはジャーナリズム(批判精神)が存在しないと政府は堕落するが、それが存在すれば良い政府が生まれるからだ。はたして東京五輪は……?

(スポーツライター・音楽評論家。国士舘大学体育学部大学院非常勤講師。著書多数)


(「損保のなかま」2016年6月1日付より)


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