スポーツに吹く風
スポーツジャーナリスト 泉 准也


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 ■15 ケチ臭い海外流失対策

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 今年のプロ野球ドラフト会議が終わり、指名を受けた選手たちは新しい人生に向けた岐路に立った。

 ところで、メジャー挑戦を表明し、日本の十二球団に指名の自粛を求めていた田沢純一投手(新日本石油ENEOS)にとって、結果は願い通りになったものの、日本プロ野球組織(NPB)がその代償のように、ピント外れのペナルティーを打ち出したことは看過できない。
 日本のプロ野球を経ずに外国のプロ球団と契約し、プレーした選手が日本へ帰ってきた場合、高校生は帰国から三年間、大学・社会人は二年間、ドラフト指名を凍結するというのだ。
 「米国でダメだった時、日本にすぐ戻れないようにすれば、海外流出の抑止になる」とか、「ダメだったら日本に戻ろうなんて、そんな虫のいい話はない」とか、海外に挑戦しようという選手について、ダメだったことを前提にモノを言うのが情けない。

 メジャー退団後二〜三年、契約しないというのは、選手にとってプロでプレーできない空白期間を作ることになるし、年齢的にも大きなハンディとなる。
 メジャー希望の選手は後を断たないだろう。日本球界は人材の出入りを縛るのではなく、流動性を高めた方がいい。
 フリーエージェント(FA)の権利取得年数を現行七〜九年から米国並みの六年にすることなどは、メジャーリーグをめざす選手にとっても、日本の球界入りが魅力的な選択肢にもなるはずだ。

 今回のことを「田沢問題」などと、まるで何かルール違反があったかのような印象を与える一部スポーツマスコミの報道姿勢にも納得できないし、NPBも了見の狭い国内ルールを作って自己満足しているように思われて仕方がない。


(「損保のなかま」2008年12月1日付より)


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