スポーツに吹く風
スポーツジャーナリスト 泉 准也


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 ■18 プロ野球球団職員にも光を

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 「プロ野球界も『氷河期』に?」と最近話題になることが多い。
 それでもスポーツ紙などで報じられる選手の契約更改の年俸額、米大リーグへの移籍金のビッグな金額に驚かれる人は多いのではないだろうか。
 ベテランやスタープレーヤーと入団したての若い選手の間には大きな格差があるものの、彼らが手にする数千万円から数億円単位の金額は、いくら「野球人生が短命ゆえに」といわれても庶民感覚では理解し難いものがある。

 ところが、グランドの選手と違って球団の運営を支えるフロント職員のサイフは厳しい状況に置かれている。これは球界で最も人気が高く、数億円のスタープレーヤーを何人も抱える「球界一のお金持ち球団」と目されているところも同じだ。
 例えば、職員が使うボールペンやノート、メモ帳など仕事で必要な文具類さえも一つひとつを伝票に起こさないと自由に買えない。徹底的に無駄や浪費を排除する方針は、以前から貫き通されている。
 フロントには、ユニホーム組から上がってきた職員も多いが、ほとんどが契約社員。給与も低く抑え込まれ、シーズンに入ればチケット販売をノルマにされ、売れ残れば給料天引き、というからむごい。
 ある球団に三十五年勤めて退職した職員(58歳)は、「何が嫌だったかと言えば、チケット売り。昔は『プラチナペーパー』と言われたほどだったのに、今は大変…」となげいた。

 ファン離れが顕著になり、その上、不況の波。どの球団も四苦八苦しているのは同じだ。「選手は商品」と裏から野球を支える球団職員に光が当たるのはいつになるのだろうか。


(「損保のなかま」2009年3月1日付より)


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