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 ■21…巨人ファンになることは「快」の獲得
   子は幸福感求めて巨人ファンになる

 終章(まとめ)(1)

 人はいかにして巨人ファンになるのか。
 この問いへの解答に到達する上で、「あなたがその球団のファンになる上でもっとも影響を受けたのは誰(何)ですか」「その時期はいつごろですか」という二つの質問がキーになった。
 ここではまず、人が「どこで」「いつ」「どんなふうに」巨人ファンになっていったのかということが解明された。


子どもは親と同一化したい…
 巨人ファンは、若年層で減少傾向が見られ、都市部居住者において相対的に少ない。巨人ファンは、スポーツ文化の多様化や「本物志向」の中における日本プロ野球人気の低下傾向という環境におかれながらも、家庭という集団に根を張って多数派として存在している。

 そしてその先行事実が、次世代の巨人ファンを規定している。人は家族との一体化・同一化をはかろうとして幼少期・児童期に巨人ファンになる。巨人ファンにとって、自分がファンになった動機や理由を論理的に説明することは難しい。「筋金入りの巨人ファン」のその筋金は、パーソナリティの奥深い部分で固められているものであって、理性的に積み上げられたものではないからである。

 したがって、兄弟姉妹の少ない家庭に育った子に巨人ファンが多いという調査事実についても十分な説明が可能である。
 すなわち、少子家庭の子どもは兄弟姉妹の多い家庭に比較して親から多くの愛情を受け取る反面、親の期待に応える責務もまた大きくなる。もし、親たちが巨人ファンであるなら、親が押し付けなくても、子どもは敏感に親の好みや希望を感じ取るはずである。「物心ついた頃」から親との同一化行動として巨人ファンとなっていた子どもは、理性の発達とともに、それが親と重なることを実感し、より一体感を強め幸福感に浸るのである。巨人ファンになること、それは「快」の獲得行為なのでもあった。

 巨人ファンが、巨人の魅力として挙げる「スターの存在」や「有名性」「強さ」とは、実は、このようにしてつくられた巨人ファンが、「物心ついてから」あと付けた理由なのである。
 つまり、自らが「巨人ファンであり続ける」うえでの理由というべきものであった。

(「損保のなかま」2003年12月1日号より転載)


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