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 ■14…そこまでして
   判定めぐるエ軍と巨人の態度


 「こんなバカげた判定はない。わがチームのエースだが、こんなことまでしてノーヒット・ゲームなどさせてほしくない」(エンゼルス・ポート副会長=当時)
 

ノーラン・ライアン
 一九七九年七月のアナハイムスタジアム。対ヤンキース戦で地元エンゼルスのエース、ノーラン・ライアンは五度目のノーヒット・ノーランに挑んでいた。八回表一死、ヤンキースの打者スペンサーの一打は低いライナーとなってセンターへ。打球は突っ込んだゴールドグラブ受賞の名手ミラーのグラブをかすめてグランドに落ちた。誰もがヒットと思った瞬間、スコアボールドには「E」が表示される。

 冒頭の言葉は、それを見たポート副会長の怒りである。彼は直ちにビデオで点検してスタンドに戻ってくると、「文句なしのヒットだぞ」と再び叫んだという。
 このゲームは、その後、ヤンキースのレジー・ジャクソンがヒットを打ってライアンのノーヒット・ノーランは潰えたのだが、記録員の「地元への温情判定」に対するポート副会長の態度は実に清々しい。野球を愛する少年のような純心さが伝わってきて感動的だ。

 さて、今年のセ・リーグの開幕戦で三連敗した巨人は、四月四日、リーグに対して「審判の判定に対する申立書」を提出している。一回戦九回表、広島・ラロッカ選手の中越えホームランと、二回戦八回裏、巨人・二岡選手のホームタッチアウトについて、いずれも判定が間違っていたとして、「調査しての確認、回答」を求めたものだ。
 セ・リーグの協定には「審判員の判断に基づく裁定については、どのような提訴も許されない」とある。また、野球規則は「打球がフェアかファウルか、投球がストライクかボールか、あるいは走者がセーフかアウトかという裁定に限らず、審判員の判断に基づく裁定は最終のものであるから、プレーヤー、コーチ、監督、または控えのプレーヤーが、その裁定に対して異議を唱えることは許されない」と定めている、にもかかわらず、である。
 「調査しての確認、回答」要求とは過去に例がない。最下位候補広島相手に思わぬ開幕三連敗を喫し、つい審判に八つ当たりしてしまったのだろう。本音は「巨人軍をなんと心得るか」である。

 ところで、あり得ない話だが「調査した結果、あの試合は巨人の勝ちとします」ということになったら、巨人はどういう態度をとるのだろうか。「どんなことをしても、勝ちたかったんだ。これぞ巨人軍魂だ」と胸を張るのだろうか。

(「損保のなかま」2005年5月1日付より)


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