(21)「こっくり」でガックリこない
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 5月18日に笑福亭仁鶴の独演会(町田市民ホール)。5月21日に歌舞伎18番の内「毛抜」と「新門辰五郎」(共に国立劇場・前進座公演)と立て続けに落語とお芝居を楽しんできました。

 上方の落語を聞くのは初めてですが、江戸弁と違って関西弁はやわらかく、同じ熊さん、八さんが登場しても又別の面白さがありました。

 独演会は噺をじっくり聞くことができます。噺と噺の間合いがテレビ落語と違い、はしょらない(短くしない)ので噺の前後がよく理解でき、最後の「おち」がズッシリと来ます。そして何回もあとで可笑しさが込み上げてきます。

 今回は850人も入りますホールでした。また運悪く後ろの座席なので、前の人の咳などで噺が聞きづらい難点がありました。やはり落語は400ぐらいの席がいいと思います。

 それに比べて、5分や10分のあわただしい、若手の「吉本興業漫才」のお笑いは、あれは「芸」ではありません。笑っている人の気持ちが理解できません。薄ペラなお笑いでテレビの視聴率を稼ぎ、一流芸人のギャラを貰っていいのでしょうか。

 国立劇場での前進座公演は、特等席で花道のすぐ隣です。花道で役者を大見得切る時の息遣いまで聞こえてくるのです。そして大向うから「なりこま屋」「てらしま屋」の声がかかります。

 ただ歌舞伎は三味線と長唄を聴いていますと急に「睡魔」に襲われます。前後、左右を見回しますと「こっくり」している人を見かけます。8千円のこっくりはもったいないです。こっくりしないコツはすきっ腹で観劇することです。

「毛抜」の公演は800回を重ねるとパンフレットに書かれていました。私は800分の1回を観劇したのですが、次回、観る機会がありましたらもっと深く観ることができるでしょう。

「新門辰五郎」は31年振りの公演ということです。辰五郎の役を31年前には祖父が演じ、今回は孫の中村梅雀です。父の中村梅乃助はこの役は過去にも演じていないのです。

 新門辰五郎と会津の小鉄との永いセリフのやり取りは圧巻でした。最後に二人が兄弟分の手を握る場面は思わず「やった」と声が出そうになりました。

 一口に伝統芸能といいますが、その重みは計り知れないものがあるのでしょう。歌舞伎が少しでも分ることに幸せを感じました。

 話しは変わりますが、国立劇場は地下鉄の半蔵門にあります。会社に勤めていた頃は地下鉄の乗り換えもスムーズにいきましたが、久しぶりに乗車いたしますと半蔵門まで2回も間違えてしまいました。特に人込みの中を歩くのには苦痛を感じました。

 在職中の40数年間、電車の中では人込みにもまれて、歩いていても人と人がぶつかりそうになり、分らないうちにストレスを全身に浴びて過ごしたものだとつくづく感じました。

 例え月給100万円貰っても、毎日朝9時に新宿まで行くのはイヤ、イヤです。年を取りますとストレスがないとボケ(認知症)になるといいますが、ストレスと付き合うのも段々と弱くなってきました。

 わたしの知人に「自分の思い通り」に行かないと我慢できない人がいます。こういう人ほど落語や歌舞伎を観ていただくと良いと思います。そして「こっくり」して目が覚めますと実に爽やかな気分になります。(経験者は語る)


(2007年6月1日)


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