横丁の思い出 横丁の思い出


(13)横丁の思い出
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 3月の横丁はまだ寒いです。この時期の遊びは「おしくらまんじゅう」とか「馬乗り」という身体が温かくなる遊びをしました。


公園

清たちが昭和30年ごろ遊んだ「原っぱ」が
こんなきれいな公園になっています。

「おしくらまんじゅう」は7、8人が背中合わせで腕を組み合い、それぞれ勝ってな方向に引っ張り合う遊びです。人数が増えるほど輪が大きくなり激しく揺れ動きます。しばらくすると身体がポカポカとしてきます。

「おしくらまんじゅう おされて泣くな」とかけ声をかけていました。

 今のように家の中に暖房施設がないので「おしくらまんじゅう」で寒さを吹き飛ばしたのです。それとなんといってもこの遊びは「女の子」も入れるので余計に熱くなりました。

 まさか大人になり、通勤電車の中で「おしくらまんじゅう」をやるとは思っていませんでした。又、満員電車の中で「痴漢」などをする「輩」は、子どもの頃に「おしくらまんじゅう」で遊んだ経験がないのでは……と思ったりして……。

「馬乗り遊び」はかなりハードです。まず5人対5人ぐらいに分かれます。馬の先頭は塀や電柱に立ち、残った4名がそれぞれの股に頭をつけ馬になります。そこに5人が勢いをつけて乗ります。立っている先頭の者と5名がジャンケンをして、負ければ交代です。

 簡単に言いますと「跳び箱」の上に乗るような感じになります。

 この遊びの楽しいのは「馬つぶし」にあります。優しくは乗ってくれません。ジャンプしてドッースンと乗ります。それも続けて5人も乗りますと、馬になっている子はつぶれてしまいます。つぶされるといつまでも馬のままなのです。

 不思議なことに「馬乗り遊び」で怪我などした子はおりませんでした。馬になった子はかなりの緊張感で挑みます。そしてジャンケンで勝ち、交代したときには、ここぞとばかりに助走をつけてジャンプして乗ります。この爽快感は馬乗りを体験した子にしか分りません。

 時々、近所の大人が馬に上に乗りますと、たまらずつぶれてしまいます。いつの世でも子どもみたいな大人がいたのです。そうです「フーフンの寅」みたいな大人でした。

 清たちから「あんちゃん」と親しく呼ばれていた人がいました。中学を途中で辞めてそのまま建設関係の仕事をしていました。正確には鳶職(高い所で作業をする人)の下働きで、木材などを鳶の人に渡したり、石や瓦を運んだりしていました。

「あんちゃん」は仕事が終わると清たちの遊びの輪の中に入ってくるのです。「あんちゃん」はいつもニコニコしていて、口数の少ないお兄さんでした。皆で相撲をやると「あんちゃん」は必ず負けてくれるのです。

「あんちゃんに 勝ったぞー」と勝ちどきを上げるのが楽しみでした。

 そんな「あんちゃん」がある日、建設現場の足場から落ちて亡くなってしまいました。後で聞いた話ですが、足場に上がるのが怖くて、怖くて仕方がないのに、大人たちが無理矢理に上がらせて事故にあったのです。

 清たちは、大きくなって本当の実力で「あんちゃん」に相撲を勝つのが目標でした。それまで一緒に遊んでくれたらどんなに楽しかったでしょうか。

 昭和30年3月「あんちゃん」は18才。
 清11才の思い出でした。


(2008年3月1日)


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