思うがまま…

臼井淳一
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(5)さわやかな涙

 先月、親類に不幸がありまして御通夜・葬儀と参加いたしました。

 お通夜の前に「納棺の儀」に初めて立ち会いました。いままで何人かの親類を送っていますが、「納棺の儀」は今回が初めての体験です。

 納棺師の方が手際よく一人ひとりにガーゼを渡し、遺体を清めるよう指示をいたします。3才の子どもから大人まで厳粛の中にも、別れを惜しむ儀式でした。死の尊厳を改めて知り感動を覚えました。

 わたしは納棺師という職業に興味を持ちました。
 そんな折に、今、話題になっています映画「おくりびと」を観て来ました。涙というのは「悲しみの涙」「感動の涙」「悔し涙」「喜びの涙」といろいろあります。

 映画「おくりびと」は観客の鼻をすする音がたえませんでした。わたしも涙しましたが「さわやかな涙」でした。

 人間は誰しも死を迎えます。どんな形の死でも、家族はそれを受け入れなければなりません。

 果たして今までわたしは父母・祖父母・親類の死に対してきちんと受け入れたのでしょうか。

 あわただしい御通夜から葬儀、そして納骨まで行ったこともありました。精進落としまで一日で行いますと頭がボーっとしてきます。

 本当に心をこめて故人を送ったのかと疑問に思うことがありました。

 映画「おくりびと」の納棺師が行います納棺の儀は、職人技に加えて、心がこもった見事な儀式です。

 わたしは自分の葬儀は「密葬」で簡単に済ませばいいと安易に考えておりました。

 けれど、「生」を受けたからには「死」も家族・友人・知人にいろいろな形で受け入れてもらう必要があるのではないかと思うようになりました。

 その中で特に「納棺の儀」は身内だけで静かにやってほしいと思います。今、これを書いていると、その最中に3才の孫娘の襲来です。しばらく一緒に遊んでいる内に、わたしは急に昼寝がしたくなりました。

 わたしが横になりますと、孫娘が
「おじいちゃん。毛布をかけてあげるね」
と、言いながら足のつま先から丁寧に薄い毛布をかけてくれました。

 嬉しいです。実に気持ちがいいです。このままずーっと眠りたくなりました。

 映画「おくりびと」の納棺師という仕事は、他人の死を自分の心の中にも受け入れております。

 殺伐とした世の中です。人間が大切に扱われない政治が横行しております。庶民の生活の苦しさを「自分の心の中にも受け入れられない」政治家に任せておきたくありません。

 映画「おくりびと」を観ての涙は「さわやかな涙」でした。

「おくりびと」 http://www.okuribito.jp/
 映画「おくりびと」予告編が見られます。


(2008年10月1日)



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