思うがまま…II

臼井淳一
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(38)葛飾柴又(1)

 「男はつらいよ」48作すべてのDVDを2月〜6月にかけて観ました。夕食の静かな時間帯に老夫婦が観るのには最高の贅沢でした。それに1作品100円という安上がりは満足でした。

「お客さんいいもの観ましたね。観るだけではだめだよ。俺の故郷、葛飾柴又に行かなきゃあー」

 そんな寅さんの声に押されて、片道車で3時間もかけて東京は神奈川県に近い町田から、同じく江戸川を渡れば千葉県の葛飾柴又に行って来ました。田舎から田舎へいったような感じで違和感はありませんでした。

 雨の中の「矢切の渡し」でお客さんが座布団を頭に乗せているのには「さすが商売熱心な柴又の船頭さん」と笑って、感心しました。江戸川河川敷はよく映画にも出てきますが整備が行き届いた河川敷です。



 映画の中で野球を終えた選手たちが「とらや」にどかどか入ってくる場面が何回もあります。実は「そんなにグランド近いのかなあー」と思っていました。今回、江戸川の柴又グラントから「とらや」まで10分もかからないことが分かり納得しました。このあたりのチームは幸せだなあー。

 江戸川と帝釈天それに門前町と柴又駅。さらに豪邸「山本亭」と下町にしては山の手の雰囲気もあるこの地を選んだ山田監督に「よくぞ日本の故郷を見つけてくれましてありがとう」と言いたいです。







『私は 生まれも育ちも 葛飾柴又です 帝釈天で産湯をつかい…』

 この名文句に少し疑問を持っていました。「帝釈天で産湯をつかい」ではなく「江戸川で産湯をつかい」ならわかります。実はそれも合点しました。帝釈天をはじめ柴又一帯は湧水が多いのです。

 町田も湧水が多く川もありますが、残念のことに「門前町」がありません。というよりはつい最近まで人間よりタヌキが多かったのです。さらに最近までは代官所があり村人を苦しめていたのです。やっと明治になり横浜港に運ぶ「絹の道」で賑わったのです。

 葛飾柴又は花のお江戸の田舎町。町田は新撰組の通ったただの田舎。同じ田舎でもわたし故郷である横浜・生麦も「男はつらいよ」のロケハンの候補地ぐらいになったでしょう。

『私、生まれも育ちも東京葛飾柴又です、姓は車、名は寅次郎、人呼んでふうてんの寅と発します』
「お客さんこればかりは変えるわけにゃいかないねえ」。と寅さんに言われそうです。










「私はなにも特別なことをやっていませんよ。監督(山田洋二)の指図通りやっただけです。芸人は変に色気を出すとロクなもの(映画)ができませんよ…お客さん。じっくり監督の映画作りをみてください…」



















「話が永いと飽きちゃうので、今夜はこのへんでおひらきとします」

「おっと一言いわせていただきますよ。今度の都議選で柴又から俺の応援する革新のお嬢さんが当選したよ。嬉しいねえ―」

「あぁ昔ふられた東立石のお嬢さんだろう」

「おいちゃん 人がせっかく気分よくしているのに」

「寅さん またふられたの?」

「うるせい タコ引っ込んでろ」

  (つづく)


(2013年7月1日)



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