【14】洞窟温泉と吉川英治
作  臼井 淳一


 33年ぶりに「逆巻=さかさまき=温泉」に行ってまいりました。
 http://www.tsunan.com/kawatsuya/


 33年前は「釣り橋」を渡り、宿にたどりつきました。写真のように「断崖絶壁」の1軒宿です。部屋は5部屋しかありません。予約は平日でも中々取れません。今では車で玄関前で行けるようになりました。

 この宿で、吉川英治が昭和24年ごろに「新平家物語」を書き上げました。

 温泉にはあまり興味がありませんが、ここのお風呂は「洞窟」の中に入っていくのです。広くはありませんが、暗い洞窟で透明度が高い、ぬるいお湯にゆっくりしたっていますと、とても神秘的で下界の出来事を忘れることができます。

 ここは、前回お話しました「秋山郷」の入り口になります。わたしたち夫婦が33年前に訪れたのは5月でしたので、バスはここまでしかありませんでした。
 ここに一泊して、鳥甲山が見られる「和山温泉・仁成館」までは徒歩で3時間をかけて行くしかなかったのです。

 その時に、先先代のご主人から、熊の串焼をご馳走になりました。ぜんぜん臭くなく、とても美味しかったです。が、やはり堅かったことを想い出しました。
 また、ご主人は絵がとても上手で、ご自分で書かれた「秋山郷の景色と俳句」を絵葉書にしておりました。

 若女将に、その時いただいた絵葉書を見せましたら、懐かしそうに見て。
「うちは、皆さん芸術一家なのですよ」と笑っていました。

 また、最近は開発が進み、熊が人里近くまで来るそうです。また、この当たりは昔から「マタギ」で有名で、今でも1年中熊の肉が食べられます。今回は「熊肉のすき焼風」を食べました。

 食事のお部屋に、吉川英治のこんな色紙がありました。

 吾以外 皆 吾師也……英治

わたしもノートに書いてきました。
吾以外 皆 凡人也……淳ちゃん(宮本武蔵殿 どうぞお許しを!)

[2003年10月1日]



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