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 ■6 トリノ五輪の愚かなメダル騒動

 トリノ冬季五輪で女子フィギュアスケートの荒川静香選手が日本人選手としては唯一のメダルを獲得した。これについてメディアの大騒ぎ報道がいまなお続いている。

 日本選手団の遅塚研一団長が大会前に「メダル五個」と公言したのを受けて、メディアは明けても暮れてもメダルにのみこだわった「偏向」的な報道を流し続けた。
 しかし、メダルはゼロのままで最後の頼みの女子フィギュアを迎えたため、荒川選手の金メダルにメディアが大騒ぎすることになったわけだ。

 それにしても、メダル騒ぎはなんとも愚かしく、むなしいものだった。開会式での平和へのメッセージはいったいどこに行ってしまったのか。競技の開始とともにトリノ五輪は国家間のメダル競争に塗りつぶされてしまった感がある。
 メダル幻想が一人歩きし、主役であるはずの選手一人一人は小さな存在となってしまった。これは本末転倒だ。メダルに届かなかった選手はあっさりと切り捨てられ、忘れ去られてしまった。

 こうしたなかで遅塚団長は荒川選手の金メダルに狂喜して、愚かさ丸出しの発言をした。「この金メダルは銅メダル十個分に値する」 
 選手という人間存在を無視して、単なるメダルで価値判断するというのは言語道断である。
 ちなみに、遅塚氏は日本オリンピック委員会(JOC)を私物化した、かの堤義明元JOC会長(元西武鉄道グループオーナー)によって、JOC理事になった人物だ。
 いまだに堤元会長の影響を断ち切れず、その大きな影響下にあるような人物をトリノ冬季五輪選手団の団長に選んだJOCの愚行も、きびしく糾弾されるべきだろう。

(「損保のなかま」2006年4月1日付より)


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